2020年代の社会保障改革へ岸田政権の「本気度」 財務省・厚労省のエース級幹部を事務局に配置

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家庭における介護の負担軽減については、家族の介護のために離職しなければならない「介護離職」を防ぐ仕組み作りや、認知症を抱える家族やヤングケアラーへの支援をどうするかといった問題について、これまで未着手の改革を本格化させることとしている。

政府は「地域共生社会」の実現をうたっている。しかし、そもそも「地域共生社会」という言葉自体がまだ人口に膾炙していない。「地域共生社会」とは、政府の説明によると、制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民1人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会、であるという。

「住まい」の支援も重要だ

この観点からみると、現行の社会保障制度で取りこぼしたものとして、「住まい」の問題が深刻であるといえる。今後、住まいの確保が困難となる生活困窮者が増える恐れがあるが、その備えが不十分である。これにどう対応するかが問われる。

医療・介護・福祉サービスについては、政府内でも複数の会議体で議論されており、これまでもさまざまな改革が行われている。全世代型社会保障構築会議では、電子カルテ情報の標準化などデジタル技術の活用や、高齢・地域人材の活用、人材育成のあり方を中心に、複数の制度をまたいだ大局的な改革論議を進めたいところである。

全世代型社会保障構築会議では、まずは、今年6月ごろにも取りまとめられる予定の「骨太方針」に反映できるよう芽出しの議論を進め、おそらくは今夏の参議院選挙後に具体策について検討を深めることとなるだろう。

※本稿において、意見にわたる部分は、筆者の私見であり、全世代型社会保障構築会議の見解を代表するものではない。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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