「どこ行くの」「帰りは何時?」婚活阻む老親の圧力 シニア男女の出会いにつきまとう親の介護問題

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今の時代、60、70代でも結婚・再婚を望んでいる人はいるので、パートナーを探すことはできるだろう。ただ歳を重ねれば重ねただけ、パートナーに出会える可能性が少なくなっていくのも事実だ。

「母を看取った後に、老いた自分を介護してくれる人はいない。姉には家族があるのだから、迷惑をかけることができない。今本気で生涯のパートナーを見つけないと、自分の老後が寂しいものになると思うんですね」

実は、先日、同じような悩みを抱える入会相談者が訪ねてきた。地方在住の50代の女性で、父母が住む実家から電車で1時間くらいの場所に一人暮らしをしている。実家では、母が認知症になった父を老老介護していて、そんな両親を、1カ月に1度、見舞っている。

日常生活を変えるのはシニアほど難しい

家庭を築いている姉が関東にいるので、自分もゆくゆくは関東で暮らしたい。そこで、関東の人とお見合いがしたいのだが、お見合いをして交際になったとしても、距離があるので頻繁にデートができないのではないかと悩んでいた。私は、こんなアドバイスをした。

「まずはあなたが関東に出てきて、こちらで仕事を探して、1人暮らしをしながら関東の方とお見合いしてみたらいかがですか? そして、1カ月に1度、ご両親の様子を見に新幹線で帰ったらどうでしょうか?」

「そうですね。考えてみます」と言いながら、その女性は帰っていった。ただ、その後は連絡がない。言葉でいうのは簡単だが、住む場所や仕事を変えるのは大変だ。ルーティーンを壊すことに人間の脳は抵抗を示す。だからこそ、婚活者がシニア世代になり、老いた親の面倒を見ながらの婚活は、思いのほかうまく進まないのだ。

婚活で結婚していくというのは、どういうことか。

まずは、相手に出会にいく時間とエネルギーを捻出する。「いいな」と思える相手に出会えたら、今度はそこからいかに密な関係を築いていけるかが大事になる。頻繁にLINEで連絡を取り合ったり、週に1度は会う時間を作ったり、さらにたくさんの時間とエネルギーを費やさなくてはならない。そこに親の介護が加わったら、20、30代の身軽な婚活者とは違った苦労や労力が生まれる。

若いころに比べたら体力は落ちているのに、背追うものが増えていくのがシニアの婚活なのだ。

しかし見方を変えれば、あれもこれもと高い理想を掲げ、家族という雛形を作る若い世代の結婚とは違っている。これまで培ってきた経験のなかで、見た目や経歴よりも、本当に自分の価値観に合う相手と、お互いに納得のいくライフスタイルを探していけばよいのが、シニアの結婚だ。

老いた親の介護があるなら、会えるときに時間を共有する別居婚でもいい。すでにいる子どもたちに相続財産のことで再婚を反対されるなら、事実婚でもいい。シニア世代の人たちはそんなふうに肩の力を抜いて、婚活に取り組んでほしい。きみえが生涯を寄り添えるパートナーに出会えるように、これからサポートしていきたい。

鎌田 れい 仲人・ライター

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かまた れい / Rei Kamata

雑誌や書籍のライター歴は30年。得意分野は、恋愛、婚活、芸能、ドキュメントなど。タレントの写真集や単行本の企画構成も。『週刊女性』では「人間ドキュメント」や婚活関連の記事を担当。「鎌田絵里」のペンネームで、恋愛少女小説(講談社X文庫)を書いていたことも。婚活パーティーで知り合った夫との結婚生活は19年。双子の女の子の母。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイトはコチラYouTubeも開設。

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