米国人驚愕「子が親の介護する日本」深刻な盲点

「家の時代」から「個人の時代」へシフト

老親の面倒は子どもがみるものなのか。日本とアメリカでは考え方がまったく違います(写真:【IWJ】Image Works Japan/PIXTA)
東京大学を卒業後、財務省を経て、現在はニューヨーク州弁護士、信州大学特任准教授の山口真由氏は、アメリカ留学で家族法を学び、家族に関するさまざまな疑問にぶつかります。山口氏の新著『「ふつうの家族」にさようなら』を基に、今回はアメリカと日本の家族観の違いについて解説します。
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日本では聞いたことがない訴訟

「あら、どうして?子どもが年老いた親の面倒をみるっていう義務が、そんなにはっきり法律に書いてあるの?」

ハーバード・ロースクールの家族法の授業で、教壇のエリザベス・バーソレッテ教授が、片方の眉をつり上げる。授業中に英語で質問をされると、心臓が縮む。それでも今日の私は、ここで引き下がるわけにはいかない。なんせ、日本を背負って手をあげたのだから。

発端は授業で習った判例だった。年老いた母は、老人ホームで人生の最期を迎える。母の死後、その老人ホームは介護にかかった費用を精算しようとした。だが、毎年、老女のために使われるはずの財産は息子が使ってしまっている。

そこで、彼女の残りの財産を相続した息子に、ホームは残額を請求した。ところが、息子は自分には支払義務がないとして裁判所で争ったのだ。

アメリカと日本の家族観の違いを感じるのは、こういう瞬間である。すかさず私は手をあげる。

「日本では、こんな訴訟は聞いたことがありません」

勢いにまかせて、私は話し出す。バーソレッテ教授は驚いたように私に尋ねる。

「あら、どうして? 子どもが年老いた親の面倒をみるっていう義務が、そんなにはっきり法律に書いてあるの?」

今度は私が驚く番だ。親子の間で、まず法律上の義務を持ち出すなんて!

次ページ法律上の義務というより道義的義務
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