相談所のお見合いで出会うのは、ほとんど恋愛経験がないまま年を重ねてきた男性ばかりだった。
「お付き合いが始まっても、お相手を好きになれない。結婚を考えた元彼は、人生に計画性はなかったけれど、男性としては魅力的だった。ただ、そんな人との結婚は選べなかったのだから、男性を選ぶ目線を変えなきゃと思っていました。それで、コツコツと1年くらいは活動したんです。そうしたらコロナになった」
新型コロナは日本で確認されるやいなや、あっという間に国内に広がり、春には緊急事態宣言が出された。在宅ワークをせざるをえない状況になり、不要不急の外出は禁止され、行動も制限された。コロナで亡くなった人のニュースが報じられるようになると、婚活をしようという気持ちに歯止めがかかったという。
高齢の母にうつしたら大変だから外出せず
「とくに志村けんさんが亡くなったのは衝撃的でした。亡くなる方って高齢者が多かったですよね。実は今、85歳になる母と2人暮らしなんです。母にうつしたら大変なことになると思って、私もできるだけ外出しないようにしていました」
そして、過去を振り返りながら、こう続けた。
「母と同居を始めたのが今から7年前、38歳のときなんですが、それまでは一人暮らしだったんです。実家に戻ることを軽く考えていたのですが、結局、それが私を結婚から遠ざけてしまう結果になったんだろうと、今になって思うんですよ」
きみえは、30歳を目前にして一人暮らし始めた。その後、前出の男性と知り合い、お互いの家を泊まり合うような付き合いをするようになった。
「婚約破棄をした半年後、父が病気で急逝したんです。突然のことだったので、母が気落ちしてしまった。ずっと専業主婦で世間を知らない人だったし、父に頼って生きてきたので、心細くなってしまったんでしょうね。私も彼と別れて寂しかったし、実家は会社にも通える距離だったので、いったん母の元に戻ったんです」
きみえには4つ上の姉がいるのだが、20代で結婚して2人の子どもを授かり、家族で地方に暮らしていた。姉も1人残された母を心配していたので、きみえが実家に戻ることには賛成だった。
「実家に戻ったばかりのころは、 “いい人がいたら結婚しよう“と思っていました。ただ、親は日々老いていく。それは当たり前のことなんですが、それが自分にどういう影響を及ぼすのか、そのときは深く考えていませんでした」
それが、母の老いを目の当たりにするうちに、現実が見えてきたという。
「82歳のときだったかな。庭で転んで足の付け根を骨折して、数週間入院したんですね。お年寄りって、寝たきりの状態が何週間も続くと、もう元のようには体が動かなくなるんですよ。リハビリには通ったものの、家事が以前のようにはできなくなりました」
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