そして、ジオコードに出戻り入社することになるのだが、限られた人にしか知らされなかったこともあり、こんな出来事が起きたという。
「経営陣とマネージャーは知っていたみたいなんですけど、他の社員には『新しい社員が入る』ことしか伝えていなかったそうで。『新しい社員を紹介します!』と言って出てきたのが僕だったので、みんな『なんだ社長の冗談か〜』という反応で、最初の1日はまったく信じてもらえなくて(笑)。3日くらい続けて出社していたら『あれ、ほんとに戻ってきたんですね!』って言われるようになりました。12年も働いていて辞めたので、まさか戻ってくるとは思われていなかったみたいです」
愛嬌のある社長のいたずらのせいで、他の社員には本当に戻ってきたとは思われなかったそうだ。社長と加藤さんの関係性が垣間見えるエピソードだが、出戻り入社に対して「少し恥ずかしい気持ちもあった」加藤さんの気持ちを軽くしたのも事実だった。
とはいえ、出戻り入社したところで、退職時に感じていた「焦り」が消えるわけではない。しかし、加藤さんの場合は複数の出来事が重なったことで、心境に変化が生じたそうだ。
まず1つ目は、コロナ禍となり、リモートワークが推進されたことだ。
「ジオコードに戻った翌月からコロナが流行し始め、働き方がガラッと変わりました。それまでは対面主義だったのがガラリと変わって、いきなりリモートワークがOKになって、電車の混雑を避けるために時差出勤の制度もできたんです。
以前は拘束されている時間が多く、スケジュールの自由度が低くて、『もっとこうだったら広報として動きやすいのに』と思うことが多かったけど、働く環境が激変したことにより、自分のペースで仕事がしやすくなりました」
また、2~3年はないと思っていた上場が想定より早く訪れた幸運もあった。
「これはほんとにラッキーだったんですけど、出戻った後に会社が上場することになったんです。広報としてやったことがない業務にも関わることになって、仕事の幅が本当に広がりました。大きな成長につながったと思いましたし、なにより、自分の自信になりました。広報仲間からも、『上場は自分のキャリアにとって大きな経験になる』という話をよく聞いていたのですが、まさにそれを体験することができました」
「転職市場での価値」への焦りは消えた
加藤さんは現在40歳になった。話しぶりを見ていると、数年前まで抱えていた焦燥感はなくなっているように見える。
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