ベンチャー企業の創業期からの社員であること、退職時にブログを書くこと……などに対し、自分が所属する会社とは異なる業界で起きている「他人事」のように感じる人も多いかもしれない。
しかし、彼の話をよく聞いていくと「転職が盛んになった時代に、ひとつの企業で仕事に打ち込んできたビジネスパーソンが抱える悩み」という、普遍的なものが見えてくる。
「転職市場での価値が落ちる」焦りから転職
彼がジオコードを退職した理由は複数あった。具体的には「自分の市場価値への不安と、年齢への焦り」「働き方の自由度(オフィス勤務が前提で、広報にとって重要な外交的な時間を確保しにくかった)」「予定していた上場が延期になったこと」の3つだ。
「転職を考え始めたのは35歳頃のこと。『もう長くこの会社にいるけど、転職市場では自分の評価ってどうなんだろう?』と考えるようになったんです。ジオコードへの入社も社長からの誘いだったこともあり、自分はしっかりとした転職活動をしたことがありませんでした。それゆえ、客観的に自分のスキルを知るタイミングがなかったんです」
転職へのハードルが下がりつつある現代では、同じ企業に長く勤めることに対する焦りを持つ人が多い。これはフリーランス人事として、多くのビジネスパーソンの転職に日々関わっている筆者も感じていることだ。
「正直、焦っていたと思います。年齢を重ねることによって転職の選択肢もみるみる減っていくというか、日に日に自分の市場価値が下がっていく気がしていました。そんな中、広報として”会社の上場に立ち会う”経験ができるのは、自分のキャリアにとって大きなプラスになるはずでした」
しかし、予定していた上場は延期となり、2〜3年は見通しが立たない状態となった。
「広報という仕事柄もあり、自分は昔から社外の仕事仲間と交流を持っていました。広報だったり、PRだったり、記者だったり。よくお互いの仕事の話もしていて……。そうやって他の人の話を聞けば聞くほど、『外に出てみたい』『広報スキルの幅を広げたい』という思いが募るようになっていました」
そんな中、加藤さんはこれまでの広報仲間とのつながりをいかして、PR業界では名前の知られた会社への転職を果たすことになる。
「自分が扱える情報の種類や量を増やしたり、情報が届いた先の反応をさらによくしたり……そういうふうに、PRの分野でもっと成長していきたいと思ったんです。
転職先のオフィスには、さまざまな新聞や情報誌、たくさんの業界専門書籍がありました。今までは自ら図書館や本屋に行かなければ手に入らなかったものが自分の机から手の届く範囲にあるのがとても嬉しくて、『こんな環境で仕事ができるのか!』と、期待に満ち溢れていました。上司となった人も心から尊敬できるPRパーソンで、最高の環境だと思いました」
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