「今はそうですね……市場価値のことはあまり考えないようになりました。以前は、活躍してる他社の人と自分を比較して焦りを感じることも多かったけど、一度、転職を経験したことによって、『自分の経験やスキルって、思っていたよりも重宝されるんだな』と実感できましたし、転職活動における戦い方も見えたというか。今は変な話、社長に『クビだ』って言われても困らないくらいには自信を持つことができていると思います」
そんなことを話しながらも、会社に対する想いは、以前よりも深まったように感じられる。
「実際に『クビだ』と言われたら『嫌です』って即答すると思います。会社への愛着もあるけど、それ以上に『まだまだ会社として成長していけるだろう、もっともっと上を目指せるだろう』という期待があるんです。だから、社長が辞めるか、会社が買収されるかまでは自分は居続けると思います」
「長く同じ会社に勤めること」に疑問を感じやすい時代
「終身雇用」の時代から、転職があたり前の時代に変わりつつある。加えて、従来の「メンバーシップ型雇用」から専門性が重視される「ジョブ型雇用」が注目を集めている。そのような変化を肌で感じ、”長く同じ会社に勤めること”に疑問を感じたり、違う仕事へチャレンジすることに対して年齢的な焦りを感じる人も多いのではないだろうか。
実際に、筆者は「新卒で入った会社に数年間在籍しているが、もう少し外の世界も見てみたい。結婚も考えているので、今動くべきか悩ましいし転職できるか自信がない」「同じ会社にいるので、給与は上がり続けているが、自分のスキルが他社で通用するかわからなくて不安。市場価値が知りたい」「新卒入社した同期が転職してすごく楽しそうだ。他社の仕事のやり方を聞いて、このままでいいか焦りはじめてきた」といった相談を受けることも多い。
しかし、出戻り転職の話を聞くなかで感じるのは、「市場価値やスキルも大切だが、仕事を通して培われた深い信頼関係も同じくらい重要な資産だ」ということだ。世情や個人の価値観が大きく揺れ動く時代に生きる中で、この”途切れない関係性”はますます貴重なものになっていくだろう。
社会の変化とともに、会社と個人の関係性がどのように変化していくのか。
今後も多くの人に取材をして、そこにあるひとりひとりの大切なエピソードから、リアルな関係性を知っていきたい。
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