焼肉屋で選ばれる代替肉「ネクストミーツ」の正体 「ステイホーム」も代替肉が注目される理由に

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さらに当初から戦略的に行ってきたのが、代替肉の認知拡大だ。話題性の高いイベントなどを積極的に展開し、SNSやメディアを活用して代替肉の存在を広めている。とくに、実際に体験してもらうことが大事だそうだ。

「にくらしいほど肉らしい 大豆ミートはこんなにおいしいフェア」で販売された「横浜中華街 華正樓」大豆ミートの回鍋肉 540円(写真:ネクストミーツ)

展開の1つとして面白いのが百貨店でのイベントだ。例えば2月16日〜3月1日には横浜高島屋にて代替肉フェア「にくらしいほど肉らしい 大豆ミートはこんなにおいしいフェア」を開催。地下食料品フロアの30ブランドが同社の代替肉を使い、約40種類のメニューを企画・発売した。百貨店での同様のイベントはこれまでにも開催されてきたが、このたびは最大規模となり、話題を集めた。3月中に伊勢丹や阪急うめだでの開催も予定されている。

かなり以前から経営が厳しくなってきていた百貨店だが、さらにコロナによるインバウンド需要激減、休業等の影響が響いている。新しい価値観を取り入れ道を模索しようとする百貨店業界の状況に、まさに新たな市場を切り開こうとするネクストミーツがうまくはまったと言えるだろう。

代替肉が注目される理由

そして代替肉市場の広がりには、コロナの影響も垣間見える。

具体的には、外食が少なくなり、家庭での食事が増えたことが代替肉への関心を高めた。

「健康のために、より食事に気を遣うようになったことや、ミートショックによる食肉の価格高騰も、代替肉が注目される理由としてある」と佐々木氏は言う。

またコロナではリモートワークやデジタルなどの生活スタイルや、SDGsなど新しい価値観へのシフトが急激に進んだ。地球環境への配慮から、あるいは食の体験を豊かにするために、代替肉を選ぶという新しい考え方も受け入れられやすくなっているのではないだろうか。ちなみに、環境のために代替肉を利用している層としてミレニアル世代が挙げられるのだが、彼らは幼い頃からIT環境が周囲にあり、デジタルとの相性もよい。

今後のさらなる展開としては、大豆以外の原料の研究を進めていきたいという。確かに、日本では豆腐や油揚げといった大豆製品がすでにある。このことから、大豆を原料とした代替肉にわざわざ高いお金を払う必要性が、海外に比べて低い。

大豆以外の原料としてはほかの豆類やキノコ、藻類が挙げられる。またアメリカでは培養肉の研究も進んでいる。培養肉はネクストミーツとして商品化するかは別として、環境はもちろん食料危機の観点からも必要性を強く感じているという。

これまで見てきたように、健康を考えて、地球環境のために、おいしいからなどなど、代替肉を選ぶ理由は幅広い。食の選択肢の1つとして、拡大する可能性は大いにありそうだ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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