不登校になったわが子に「父親が言いがちな失言」 口から出てしまう「社会で通用するのか」
――市川さんの息子さんも不登校経験をされたそうですね。どのような経緯で不登校になられたのですか?
中学2年生の夏休み明けに、不登校になりました。もともと中学1年の秋から体調不良を理由に早退することがたびたびあって、どうしたものかと妻に尋ねたら、クラスメイトからいじめられていたことがわかったんです。僕としてもなんとかしなければと思って、学校に相談するなど、できるかぎりの対応をしました。当時は原因を取りのぞけば、また元通り学校へ通えると思っていたんです。
しかし、中学2年生になっても、息子のようすは変わらず、週に1回、2回は早退や欠席のくり返し。それでも通いはするから大丈夫だろうと思っていたのですが、結局、夏休み明けには完全に学校へ行かなくなりました。
学校復帰 その一心で
――そのときの心境はいかがでしたか?
まさか自分の子が、と思いました。僕自身その時点では学校へ行くことが「ふつう」であると信じていましたから、とにかく学校復帰させなければ、というので頭がいっぱいでした。
最初は息子に対しても「なんで学校へ行かないんだよ」「いじめなら俺が相談に行ってやる」と話しかけていました。僕としては問題を解決したくて話しかけているつもりだったのですが、息子にとっては圧力でしかなかったんですね。しだいに息子は僕のことを避けるようになりました。僕が家に居るあいだ、息子は自室にこもりっぱなし。僕が外出したら、リビングに出てきて食事をとるような生活が2カ月続きました。
僕もイヤがられていることはだんだんわかってきたので、あまり話しかけないように対応を変えました。
とはいえ息子のことは心配なわけですから、代わりに不登校について自分で情報収集を始めたんです。調べていくうちに、どうやら不登校はめずらしいことでもなく、そこまで深刻に考えなくてもよい、ということはわかってきました。じゃあ、不登校のことを理解できたかというと、まったくそんなことはなく(笑)。本当の意味で受けいれるまでには、時間を要しました。
――何が壁となったのでしょうか。
これは父親あるあるなんですけど、外に出て仕事をする立場もあって、「はたして社会で通用するのか」という視点でどうしても考えてしまうんです。社会で生きていくためには、ある程度の学力とコミュニケーション力が必要不可欠だと言われているのに、不登校のままで大丈夫なのか、と。そこを起点に考えるから、できることならば学校へ行ってほしいという気持ちに戻ってしまうんです。もちろん母親も将来に関して心配するのは同じだと思います。でも、傾向としては、父親のほうが心配の度合いは強い印象があります。実際、わが家もそうでした。