在宅勤務のごみを「家庭ごみとして出す」深刻問題 清掃職員は極限まで減少、ごみの量増は厳しい

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例えば、東京23区では、各区が定める1日あたりの平均重量未満の事業系ごみを排出する事業者については、各区が発行する「事業系有料ごみ処理券」(以下、有料シール)を購入してごみや資源に貼付すれば、区の収集に出せるようにしている。

なお、このような自治体が行う家庭ごみ収集と合わせて処理される事業系廃棄物は「あわせ産廃」、一般廃棄物は「あわせ一廃」と俗に呼ばれている。

事業系有料ごみ処理券(出所)板橋区のHP「有料ごみ処理券のご案内」

このような有料シールは、会社勤務の読者の皆さんには関係ないと思われるかもしれないが、例えばコロナ禍でのテレワークを行っていれば密接に関係してくる。

廃棄物処理法上、テレワークを通じて生じるごみは「事業系ごみ」と位置づけられるため、(事実上難しいが)自ら処理するか、廃棄物処理業者に処理を依頼するか、家庭ごみとは区別した袋に入れ、東京23区であれば、ごみ量に応じた有料シールを貼付してあわせ一廃やあわせ産廃として自治体に処理してもらわなければならない。

清掃職員や収集車は極限まで減らされている

とはいえ、事業ごみを一般家庭ごみとして集積所に出された場合、無料で引き取ってしまうことが多いのが現実だ。筆者が実際に見たある現場では、「ごみ集積所」に事業系ごみや資源物を出すことは禁止されており、市が許可する業者に委託するように伝えている。しかし、「ごみ集積所」に飲食店を営む家から油分たっぷりの生ごみが出されていた。それも一般家庭ごみとともに収集。事実上無料で引き取っている形になっていた。

仮に事業ごみが家庭ごみとして排出されるようになると、現在の体制での収集は難しくなる。これまでの行政改革を通じて清掃職員は極限まで削減されてきており、また収集車も限界まで減車されてきているため、新たなる業務に迅速に対応できる体制がすぐには整わないからである。

上記の例は飲食店を営む家の例で、テレワーク中の家とはやや性質が異なるが、在宅で事業を行う人々が増加していけば、自ずとそこから生じる廃棄物への確実な対応が迫られるようになる。

しかし、国や自治体は今後の対策への検討を進めておらず、既存の仕組みに乗せた対応で凌いでいる状況にある。まさに廃棄物行政が社会の変化のスピードに追いついていない状況であり、デジタル化も含めた「新しい生活様式」への対応が今後の大きな課題となる。

これまで廃棄物処理法に基づいて「ごみ」について述べてきたが、普段何気なく出しているごみではあるがその奥は深い。清掃事業には住民だけでなく市区町村や事業者といった複数の人々が関わっているため、さまざまなドラマがそこにある。これからの連載でその奥深さを読者の皆さんとともに共有していきたい。

藤井 誠一郎 立教大学コミュニティ福祉学部准教授

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ふじい せいいちろう / Seiichiro Fujii

1970年生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。同志社大学総合政策科学研究科嘱託講師、大東文化大学法学部准教授などを経て現職。専門は地方自治、行政学、行政苦情救済。

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