対ロシア強硬に大転換「ドイツ」に日本が学べる事 控えていた武器供給を決断し、軍事費も倍増

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ドイツは第2次世界大戦で敗北後は、アメリカ、イギリス、フランス、ロシアによって封じ込められ、完全武装解除させられ、再軍備と北大西洋条約機構(NATO)加盟が許されたのは戦後10年が経ってのことだった。東西冷戦期には日本同様、海外派兵は行わず、軍備増強には消極的で貿易と外交的対話が外交の基本だった。冷戦終結後はますます経済外交に重きが置かれ、西欧最強の経済大国として欧州連合(EU)を牽引してきた。

ドイツ連邦軍は国連の平和維持活動・人道援助活動やNATOの域外軍事行動への参加が増え、9・11アメリカ同時多発テロ後のアフガニスタン戦争で、初めて本格的な国際紛争への関与を行った。だが、昨年夏のアメリカの唐突なアフガン撤退でドイツ駐留軍は感謝もされずに撤退を余儀なくされ、ドイツ議会は連邦軍の海外派兵の再検討を議論するに至っていた。

冷戦期はソビエト連邦側に属する東ドイツと国境を接する国として、ロシアとアメリカとの仲介役を務め、冷戦終結後も西欧諸国の中では特殊な立場にあり、周辺国に気を遣う存在だった。それはナチスドイツの犯した罪への周辺国への贖罪意識でもあった。ナチスの復活につながるネオナチは厳しく監視され、国防予算はGDP比1%台前半で推移してきた。ベルリンの壁崩壊時に50万人近くいた軍の規模も今では約18万人に縮小している。

無論、周辺国も先進国で、キリスト教の精神的背景もあり、ドイツを許す空気もあった点は東アジアとは大きく違う。ドイツはNATOに守られ、特にフランスとドイツの関係はEUの深化拡大の牽引役として深い信頼で結ばれている。イギリスがEUを離脱した今、両国のEUでの責任は増している。

経済関係の深化で牽制できると考えてきたが…

ドイツはベルリンの壁が崩壊してから30年、特にメルケル前政権の16年間は、ビジネスによる経済的つながりを深めれば、ロシアとも友好的な関係を築けるとの認識に賭けてきた。

世界最多の犠牲者を出した独ソ戦を戦ったドイツは、西欧の中ではロシアの正体を最もよく知る国の1つだが、戦後、人道主義を強めたドイツは近年、経済関係の深化でロシアを牽制できると考えてきた。

その典型が天然ガスのロシアからの輸入だった。現在、ドイツは同国が供給を受ける天然ガスの48%をロシアに依存している。原発ゼロを今年達成しようとしたドイツは、原発廃炉で失われる電力を温暖化ガスの排出が少ない天然ガスで埋め合わせる予定で、ロシアからバルト海を通じて直接ドイツに天然ガスを供給するノルドストリーム2の開通で、さらなるガス供給を計画していた。

アメリカは一貫してロシアへのエネルギー依存度が増すことでNATO地域の安全保障が不安定化するとして同プロジェクトの中止を訴えてきた。しかし、経済関係の深化でロシアとの対立関係は緩和されるとする信念は変わらず、アメリカの反対は無視されてきた。それよりも1970年代後半からの反原発運動の集大成である原発ゼロを優先した。

シュレーダー元独首相は、ロシア国営石油大手ロスネフチの取締役で、ノルドストリーム2の建設を担当する企業の株主委員会の会長も務めていた。ドイツの要人はロシアで優遇され、批判されることも少なかった。ドイツにはロシアに住むドイツ系ビジネスマンとの深いネットワークがある。

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