専門家が指摘「プーチン」にコロナ禍で起きた変化 「賢い指導者」という国民の信用は裏切られた
自らの大統領のことはわかっている——。ロシアの人々はそう考えていたが、これは間違いだった。
そして2月24日には、すでに取り返しのつかない状況になっていた。
大統領に就任してからの22年間、ウラジーミル・プーチンは国内に対してはほぼ一貫して、静かな決意を秘めた指導者のオーラをまとってきた。卓抜した危機管理能力によって、世界最大の国土を誇るロシアを巧みに導く人物。それがプーチンの国内的イメージだったのだ。
だが、こうしたイメージはウクライナ侵攻で崩れ去り、指導者プーチンのまったく別の姿がむき出しとなった。プーチンは核の超大国を出口の見えない戦争に引きずり込み、ソ連崩壊以降30年にわたり平和な世界秩序の中で居場所を見つけようとしてきたロシアの試みに終止符を打とうとしているようにしか見えないからだ。
プーチンの行動はもはや理屈では理解不能
2月24日、ロシアの人々は衝撃の中で目を覚ますことになった。午前6時前に放送された国民向けのテレビ演説で、プーチンはウクライナへの全面攻撃を命じたと明らかにした。ウクライナは、政治的な立場にかかわらずロシアの人々がしばしば「兄弟国」と呼ぶ、ロシアとつながりの深い国だ。
開戦に対し国民から歓喜の声が自然と沸き起こることはなかった。長年にわたりプーチンの権威主義と妥協し、適応を試みてきたリベラル派の著名人たちは、自分たちには止めるすべのない戦争に反対する意見をソーシャルメディアに投稿する以外、何もできない状態となっていた。
国民の中にはもっとはっきりと声を上げる人たちもいた。サンクトペテルブルクからシベリアまで、何千という人々が圧倒的な数の警察隊を前にしながらも街頭で「戦争反対」のデモを繰り広げ、人権団体のOVDインフォによると、24日だけで1700人を超える拘束者を出した。