専門家が指摘「プーチン」にコロナ禍で起きた変化 「賢い指導者」という国民の信用は裏切られた

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そして、モスクワの外交政策ウォッチャーの多くは、彼らが何十年と研究し続けてきたプーチンの意図を、とんでもなく読み違えていたことを認めた。アナリストの圧倒的大多数はここ何カ月と、ウクライナを軍事的に包囲するプーチンの行動を、抜け目なく巧みな「はったり」と位置づけてきた。

「私たちが考えていたことは、すべて間違いだったことが明らかになった」と、アナリストの1人は話した。このアナリストは、何を言うべきか途方に暮れているため、記事では名前を伏せて欲しいと強く要望した。

別のアナリストは、「動機も、目標も、可能性としてどのような結果が考えられるのかもわからない」とし、「とても奇妙なことが起きている」と語った。

もう1人のアナリスト、政治分析会社Rポリティックのタチアナ・スタノヴァヤは、「ずっとプーチンを理解しようとしてきた」が、もはやロジックによる分析は限界に達したようだ、と話した。「現実路線は後退し、彼は感情任せで動くようになっている」。

楽観から一転、「出口なき戦争」に広がる絶望

その一方でロシアの株価は暴落、ATMもドル不足に陥り、国民はインターネット上でロシア自慢の軍隊が、自分たちの親戚や友人が何百万人と住むウクライナで殺戮を繰り広げる様子を目にした。

「世界がひっくり返ってしまった」。24日夜、機動隊が多数出動する中、モスクワ中心部で反戦デモに参加していたアナスタシア(44)はそう言って涙を流した。「どんなにひどいことになるか想像もつかない。破滅的な出来事だ」。アナスタシアは報復を恐れ、ファーストネームしか明かさなかった。

国民の多くはそれまで、クレムリンが喧伝する「ロシアは平和を愛する国家であり、プーチンは計算高く慎重な指導者だ」という物語を受け入れていた。国民の多くは今でも、ロシアが1990年代の貧困と混沌を脱し、それなりの生活水準と国際社会からの尊敬を得られる国になれたのはプーチンのおかげだったと考えている。

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