専門家が指摘「プーチン」にコロナ禍で起きた変化 「賢い指導者」という国民の信用は裏切られた
過去3カ月間、ウクライナ周辺にロシア軍が集結しているのは侵攻の前触れにほかならないとアメリカの当局者が警告する中、ロシア国民はこうした見方を一笑に付してきた。
プーチンはリスク管理を重視する指導者であり、軽率な行動に出て予測不能な事態を招くはずなどないが、西側にはそうしたことが理解できないのだ、という立場である。反体制派の大物は獄中か国外という状況の中、反戦運動を組織できるだけの影響力を備えた人物はほとんどいなくなっていた。
ロシア政府とつながりのある著名人には侵攻説を荒唐無稽と決めつける態度を改める者も出るようになっていたが、彼ら自身が認めるように、もはや手遅れだった。国営テレビの深夜番組で突出した知名度を誇るコメディアン、イヴァン・ウルガントは、2月に入ってからも、戦争が近づいているという見方を自身の番組内でからかっていた。そのウルガントは24日、インスタグラムに真っ黒な正方形の画像を投稿し、「恐怖と苦痛」という言葉を添えた。
「考えられる最悪シナリオしかない」
一方、有名テレビパーソナリティーのクセーニア・サプチャクは、1990年代にプーチンの師匠となった元サンクトペテルブルク市長を父に持つ人物だが、そのサプチャクはインスタグラムの投稿に、祖国の未来についてはもはや「考えられる最悪のシナリオしか信じられるものはない」と記した。彼女はその数日前、ウクライナやアメリカの大統領に比べると「成熟し、適切な資質を備えた政治家だ」としてプーチンを称賛したばかりだった。
「私たちの誰もが、この状況から逃れられない」とサプチャクは24日の投稿に書いた。「出口はない。私たちロシア人は、今日という日がもたらした結果から抜け出すのに何年ももがき苦しむことになるだろう」。
新型コロナ禍の中で、アナリストたちはプーチンのある変化に目を留めていた。西側諸国の指導者とは比較にならないほど厳しい隔離のバブルに引きこもったプーチンは、孤立の中で怒りを強め、より感情的になり、硬直した歴史的な文脈の中で自らの使命を語ることが増えた。
ロシアが西側から過去何世紀にもわたって押しつけられてきた誤った歴史を正す必要があるとプーチンは語り、公の発言で見せる歴史観はかつてなく歪んだものになっていた。