「部下が動かない」と嘆くPDCA信者に欠けた視点 権限のないリーダーが結果を出すトヨタの強み
トヨタのチーフエンジニア制度の秘訣
トヨタ自動車の業績を支える重要な仕組みとして、ジャストインタイムに加え、製品開発のチーフエンジニア制度を指摘することができます。この制度では、チーフエンジニアと呼ばれる一種のブランドマネジャーが、担当する車種の開発からマーケティングまでを一気通貫で責任をもって管理することになります。
この制度はいわゆるツーボス・システムと呼ばれるもので、部下にとって上司はプロジェクトリーダー(チーフエンジニア)と機能別管理者(所属部署の上司)の2人が存在することになります。企業によっては、部下は機能別管理者の命令を優先し、プロジェクトリーダーの依頼には面従腹背し、効率よく物事が進展していかないということが生じることも多々あるのではないかと思われます。それにもかかわらず、トヨタのチーフエンジニア制度の特徴の一つが、チーフエンジニアには権限が与えられていないという点です。
では、そもそもなぜチーフエンジニアに権限が与えられていないのでしょうか。実は、かつてトヨタではチーフエンジニアに権限が与えられている時期があったようです。しかし、それが撤廃されたのは、それが機能しなかったからです。
自動車の部品点数は、通常の製品と比べても膨大な数となります。いかにチーフエンジニアが優秀であったとしても、それら1つひとつの要素技術、部品に精通しているわけではありません。開発現場では、技術を知らない上司が現場介入すれば混乱に拍車をかけることになります。したがって、チーフエンジニアによる業務命令というかたちでの現場介入を防止するために権限をもたせていないと解釈することができるのではないでしょうか。
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