「部下が動かない」と嘆くPDCA信者に欠けた視点 権限のないリーダーが結果を出すトヨタの強み

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
現場が自発的に動くリーダーに求められることとは(写真:den-sen/PIXTA)
新型コロナウイルスの感染拡大による部品不足や、燃料や原材料価格の高騰など不安材料が多いものの、トヨタ自動車は販売増などで2021年4-12月期の営業利益が過去最高を更新した。トヨタの業績を支える重要な仕組みは、多くの文献で紹介されており、この制度を取り入れようとする企業も少なくない。しかしながら、形だけ真似て導入したものの、うまく機能していないという事例が多々見られる。何が欠けているのか。『OODA Management(ウーダ・マネジメント) 』などの著書があり、現場主導の意思決定や次世代組織に詳しい神戸大学大学院の原田勉教授が、トヨタの強みから学ぶべき大事な視点について解説する。

トヨタのチーフエンジニア制度の秘訣

トヨタ自動車の業績を支える重要な仕組みとして、ジャストインタイムに加え、製品開発のチーフエンジニア制度を指摘することができます。この制度では、チーフエンジニアと呼ばれる一種のブランドマネジャーが、担当する車種の開発からマーケティングまでを一気通貫で責任をもって管理することになります。

『OODA Management(ウーダ・マネジメント)』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

この制度はいわゆるツーボス・システムと呼ばれるもので、部下にとって上司はプロジェクトリーダー(チーフエンジニア)と機能別管理者(所属部署の上司)の2人が存在することになります。企業によっては、部下は機能別管理者の命令を優先し、プロジェクトリーダーの依頼には面従腹背し、効率よく物事が進展していかないということが生じることも多々あるのではないかと思われます。それにもかかわらず、トヨタのチーフエンジニア制度の特徴の一つが、チーフエンジニアには権限が与えられていないという点です。

では、そもそもなぜチーフエンジニアに権限が与えられていないのでしょうか。実は、かつてトヨタではチーフエンジニアに権限が与えられている時期があったようです。しかし、それが撤廃されたのは、それが機能しなかったからです。

自動車の部品点数は、通常の製品と比べても膨大な数となります。いかにチーフエンジニアが優秀であったとしても、それら1つひとつの要素技術、部品に精通しているわけではありません。開発現場では、技術を知らない上司が現場介入すれば混乱に拍車をかけることになります。したがって、チーフエンジニアによる業務命令というかたちでの現場介入を防止するために権限をもたせていないと解釈することができるのではないでしょうか。

次ページほかの企業がトヨタの制度を模倣しても成功しない理由
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事