中国が日中首脳会談を決断した3つの理由 自民党と中国共産党のパイプ復活が焦点

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また、米国から、安倍首相に対し、誠意を示して中国との関係改善を試みるよう圧力があった。日米防衛協力のための指針の見直しを踏まえるとこれは非常に重要になる。交渉プロセスから生まれた提案は、(例えば尖閣諸島周辺を共同でパトロールするなど) グレーゾーンの抑止力を「シームレスに」強める日本の試みに米国が一定の役割を果たすというものだ。が、米国の前提条件は、日本がわざわざ尖閣という火種に火をつけようとしないということだろう。

経済界からの要求もあった。日本からの投資や貿易のためにビジネス環境を安定させるよう、経済界の勢力が安倍首相に関係改善に取り組むよう圧力をかけていた。

中国が首脳会談を決めた3つの理由

――中国は尖閣諸島問題で日本に対する圧力を徐々に強めていた。なぜ日本との関係改善を模索する方向に舵を切ったのか。

中国の指導部が、安倍首相のことを一時的な成功者ではないと判断した可能性がある。かつてより、中国の日本に対する態度は、もっとも良いときでも非協力的で、ことによると冷淡だった。それと比べると、安倍首相に対しては、本物の敵意があり、多くの中国の指導者達は彼が退くのを待っていることを望んでいたようにみえる。しかし、おそらく彼らは、この戦略が持続可能なものではないことを自覚したのだろう。当分の間、中国は安倍首相以外の首相が生まれる選択肢は現実的でないと自覚した。ただし来年になって、彼の政治的立場が弱体化すればこれは変わるかもしれない。

第二に、周辺地域や米国から日本を孤立させようとする戦略が機能していないとの認識もあったと考えられる。日本との関係が非常に敵対的であることが関係し、中国は米国との連携強化など効果的な政治的関係を追求できていない。

そして第三に、表面的であっても安倍首相と会わなければ、それは非礼を意味すると考えたのだろう。APEC諸国からの視線を中国がどれだけ重視しているか、ということを私達は見てきたため、この第三の理由はひょっとして非常に大きな理由かもしれない。これが唯一の理由ではないことを願いたいものだ。

――経済面での関係も変わっていくと思うか。

中国を離れつつあった日本企業からの投資が中国へ戻っていくかどうかは疑問だ。過去10年間の日本の海外開発援助及び民間設備投資を調べると、中国から離れ、ASEANやインドへと向かう方針転換がかなり長期間進行していることがわかる。日中間の政治的緊張は、すでに明白だったプロセスを単に加速させただけだった。とは言うものの、日本と良好な関係になれば、安定した社会環境にあることを世界に対して伝える効果がある。日本だけでなく、より多くの国からの投資を呼び込むためにも、両国の関係改善が持つ意味は大きい。

むろん、公式な政府間交渉やLDP-CCP間の関係を再構築していけば、経済面での関係が強化される可能性はある。しかしそのような関係になるにしても、時間がかかるだろう。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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