先日、某外資系金融機関のセミナーにおいて、外国人投資家に対して安倍政権を説明してくれというご依頼があった。そこで筆者はこんな風に解説してみた。
外国人投資家にも好評、「安倍首相2つの顔」理論
◎ 安倍首相には2つの顔がある。Economic Mode(エコノミックモード)とSecurity Mode(セキュリティ=安全保障)モードである。政権が発足して半年間はEconomic Modeだったが、2013年7月の参議院選で勝ってからSecurity Modeに転じた。それから1年後、集団的自衛権の解釈変更を閣議決定したら、再びこの夏からEconomic Modeに戻っている。
◎ Economic Modeの安倍氏は「改革者」(Reformer)である。従来の自民党の常識から行くと、驚くほど大胆な考え方をしている。日銀総裁に黒田東彦氏を指名したこと、東京五輪招致に全精力を投入したこと、TPP交渉への正式参加を表明したことなど、うまく行ったから良かったようなものの、その本質はかなりのRisk takerである。
◎ Security Modeの安倍氏は、「保守政治家」(Conservative Politician)である。「タカ派」(Hawks)だとか、「反中派」(Anti-China)だとか、「歴史修正主義者」(Revisionist)だと見なされることもある。ところがやっていることは意外と無難で、集団的自衛権の解釈変更では最後は公明党の顔を立てたし、法制手続きは来年春以降に先送りした。政治手法は案外とPragmatistである。
◎ すなわち、Reform-minded Risk TakerとPragmatic Conservative Politicianが代わる代わる登場するのが安倍晋三という政治家である……。
この「2つの顔理論」を援用すると、今回の「解散と増税延期」判断をうまく説明できるような気がする。安倍首相は、(よく知っている)安全保障問題では老獪に、(よく知らない)経済問題では自由奔放に行動する。今まではそれがうまく当たってきた。
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