中国が日中首脳会談を決断した3つの理由 自民党と中国共産党のパイプ復活が焦点

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――中国は、尖閣諸島の主権要求に対する積極性を弱めると思うか。

中国は、日本による尖閣諸島の実効支配について異議を唱え続けるだろう。日本は主権についての法的論争があるという現実を認めない範囲であっても、もう少し譲歩することができると私は考えている。日本はわずかであっても妥協する余地があるように思う。ただし、習主席が尖閣についての圧力を強めるか弱めるかは、内政や安倍首相の対応次第だ。

――今回の緊張緩和は、持続可能な雪解けとみていいのだろうか。

どちらかの側が最初の段階で土台を壊すことにつながる軋轢を誇張し、さらに関係回復への取り組みに時間をかけるということをしない限りは、楽観的にみることができるだろう。しかし特に安倍首相が政権を握り続ける間は、依然として脆弱であるだろう。

争点は靖国ばかりでない。戦後70周年を迎える来年に、安倍首相は何を語るだろうか。新たな"村山談話"を出すのか、出すとすればそこで何を語るのか。安倍首相がより未来志向の声明を発表することを問題視する人はいないと思うが、その声明において過去について何を語るかが重要になる。安倍首相自身が「侵略」あるいは「植民地政策」といった言葉を口にするだろうか。

もう一つの不確定要素は、中国が70周年記念式典をどう扱うかということだ。中国が過去の日本への非難を強調しすぎる言葉を使った場合、その言葉は安倍首相を論争へと駆り立てる事になるかもしれない。

党の関係が修復された意義は大きい

他方、習・安倍会談の下準備によって刺激を受けた重大な展開がある。それは日本の政権与党である自民党 (LDP) と中国共産党 (CCP) とのつながりが修復されつつあることだ。両党の関係は2009年に民主党が政権をとった時以来、長らく断ち切られていた。現在のところ、中国と日本の間の主な仲介者は、福田康夫元首相と公明党の国会議員達である。

しかし、その関係が改善していくだろう。CCPが中央対外連絡部の職員を日本に送り、彼らが自民党の谷垣禎一幹事長を含む自民党の幹部と会うことにより、両党の対話レベルは格上げされるだろう。谷垣幹事長は自民党内におけるこの上ない親中派であるが、現在の役職を維持し続ける場合、将来的に関係改善の良い要因となる可能性がある。

より若い自民党議員のためにも、CCPの指導部とのさまざまな「パイプ」やチャンネルを復活させることは大至急、必要である。かつて、年配自民党員とCCPとの間で親密な交流があったものの、民主党が政権を奪取してからは消滅したため、引き継がれていない。

――日本政府が中国との関係改善を進めようと動き出した理由は?

多くの異なる要因が安倍首相を後押ししていると考えている。安倍首相は救いようのないタカ派ではないことを示すため、特に来年の集団的自衛権関連法案の成立に先立ち、日本国民に外交面での積極的な姿勢を見せたいと思っている。

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