「他人の幸せを願う人」ほど幸せになれる衝撃事実 一方、嫉妬しやすい人ほど健康を害することも

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幸せは他人がもたらしてくれるもの(写真:outa/PIXTA)
嫉妬や恨みから卒業して、幸せを手に入れるために人は何をすればいいのでしょう?明治大学法学部教授の堀田秀吾氏と、医師の木島豪氏の共著本『科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全』より一部抜粋・再構成してお届けします。

「自分は嫉妬深い」という認識がある人は、少なくないかもしれません。嫉妬深いという自己認識をお持ちの人は、「嫉妬はよくないこと」という意識はありつつ、どうしても嫉妬してしまうのでしょう。

人は、他者と自分を比較せずにはいられない生き物です。ただし、比較して相手が自分よりも上の立場にいると認識することと、その相手をねたむことはイコールではありません。できることならセルフコントロールをして、嫉妬心を抱かずに過ごしたい――そう願う方は多いと思います。

そもそもの話ですが、嫉妬は人間になくてはならない感情です。狩りや農耕だけで食事・生活を賄っていた時代から、人間の内面は変わっていないとする進化心理学的に説明するなら、嫉妬とは自分の子孫繁栄の障害になるものを防ごうとする行動力の源になる感情です。自分より魅力にあふれた存在を嫌悪して攻撃することで、自分の子孫繁栄の可能性を高めるわけです。

言わば、怒りと同じような自己防衛本能の現れであり、人間にとって必要不可欠な感情ですから、嫉妬を抱くことは人間として当たり前の感情とも言えます。だからこそ、嫉妬をバネに行動するときは、「あのライバルに負けないようにがんばろう」とポジティブなアクションにつなげなければいけません。

「良い嫉妬」と「悪い嫉妬」がある

「どうせ私なんて……」と落ち込んだり、自分を傷つけたり、あるいはライバルを排除するための暴力に発展してしまうのは避けないといけない。嫉妬も怒りのように、メリットとデメリットがあるというわけです。

心理学では、ポジティブなアクションにつながるねたみを「良性ねたみ」、そうではないねたみを「悪性ねたみ」と呼びます。ねたみにメリットがあるといっても、嫉妬という言葉にあまりポジティブなイメージがないように、多くの場合、人間の嫉妬心は「悪性ねたみ」のほうに向かい、心身に悪影響を与えてしまう可能性が高くなります。

実際に、イェーテボリ大学のヨハンソンらによる、スウェーデン在住の女性800名(研究開始の1968年時点で平均年齢46歳)を38年間追跡調査するという貴重な研究があります。

この研究によると、怒りや不安や嫉妬などを抱きやすい傾向を持つ女性は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まるという結果が報告されています。ヨハンソンらは、男性も同じ傾向にあるとみており、嫉妬心が長期的な健康に大きく影響する可能性を示唆しています。

また、東フィンランド大学のネウヴォネンらによる研究でも、他者に不信感を抱く傾向がある人は、認知症のリスクが約3倍になるとされています。これらの研究から考えると、やはり健康面にリスクのある嫉妬はしないに限るといえるでしょう。

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