貿易赤字となり円安のプラス効果は出にくい
企業の想定よりも実際の為替レートが円安になれば収益は上方修正になる、と反射的に考えてしまうが、こうした貿易収支が黒字だった時代の公式は見直す必要がある。輸出入ともに外貨建て取引の多い日本では、円安になれば輸出金額も輸入金額も円ベースで拡大する。かつては想定以上に円安になると貿易収支黒字が円ベースで膨らむことになり、企業収益は輸出企業のプラスが輸入企業のマイナスを上回り、差し引きでプラスだった。
しかし、現在では貿易収支は赤字だから逆のことが起こって、想定以上の円安になれば貿易赤字は拡大する。円建て比率は輸出が36.5%で輸入は20.5%(2014年度上半期実績)と輸出の方が高い。このことを考慮し、1割円安になる効果を単純計算すると、2013年度の貿易赤字が約11兆円だったものが、13兆円へと約2兆円も拡大することになる。
長い目でみれば円安によって国内では輸入品が割高になって輸入数量が減少し、海外では日本製品が割安となって輸出数量が増加するので、貿易赤字を縮小させる効果があるはずだ。しかし、現実には輸出数量はそれほど伸びておらず、少なくともこれまでのところでは円安のプラス効果がはっきりと目に見える形で出てきている訳ではない。
黒田総裁の「できることは何でもやる」という強い言葉とは裏腹に、今後さらに緩和を強化するハードルは高まっている。追加緩和を決めた政策決定会合では票が割れて、賛成5対反対4という僅差であった。日本経済が望ましい状態に移行できるかどうかは、物価上昇が賃金の増加に結び付くかどうかにかかっていると考えられる。
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