物価の上昇は賃金の上昇に結びつくのか

日本銀行の緩和政策の効果に疑問

日本銀行の追加緩和で株価は暴騰したが……(撮影:梅谷秀司)

日本銀行は10月31日の金融政策決定会合で、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した。エコノミストや市場関係者のほとんどが予想していなかったタイミングで、意表を突いて決定が行われ、市場を大きく動かしたという点については、全く見事というほかない。同日にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が基本ポートフォリオ(資産構成割合)を見直し国内株式や外国株式の割合の引き上げると発表したこととあいまって、日本のみならず海外の株式市場でも株価が大幅に上昇した。

日銀の政策波及経路は円安による輸入物価上昇

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黒田東彦総裁の下での日銀の量的・質的緩和政策は、「期待に働きかける」政策であると言われる。日常使われる期待と言う言葉には希望や願望という意味合いがあるが、経済学で言う「期待」は将来に対する予想や予測という意味で使われる。

2013年4月にこの政策が導入された際、日銀が発表した「『量的・質的緩和』の導入について」では、「市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる」と述べられている。つまり、これは企業や消費者が抱いている物価は上がらないという予想を、物価が上がるという予想に転換させようというものだ。

量的・質的緩和政策がどのようなメカニズムで人々の期待を変えるのかという点について、あまり明確な説明を見た記憶がないので、期待されていた状況と違うという批判は筋違いかも知れない。

しかし、多くの人達は景気が良くなって需給がひっ迫し、物価が上昇するという姿を思い描いたのではないか。物価の上昇自体はある程度実現したが、多くの人々の期待とは少し違って、円安・輸入物価上昇という経路を通じたものだ。果たしてこのまま緩和を強化していくことで、日本経済を人々が望んでいる正常な状態に導くことができるのか疑問が残る。

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