消費者物価上昇率は前年同月比で8月が3.4%で9月は3.2%だが、9月の賃金指数は0.8%の上昇にとどまっている。物価上昇率は、消費税率の引き上げの影響が2%程度あるとみられるので、これを除くと1%台前半になる。日銀の目標としている消費税を除くベースでの2%には達しないものの明らかに物価は上昇しており、そこそこの物価上昇だ。
家計調査を見ると9月の消費支出(二人以上の世帯)は年同月比で 実質5.6%の減少、名目は1.9%の減少となっている。勤労者世帯の実収入は前年同月比で 実質6.0%の減少、名目は2.3%の減少となっており、この調査がフレの大きいことを考慮しても、賃金の低迷から消費の低迷が続いているのは明らかだ。多くの経済指標は、現在の日本経済が「賃金は増加しないが、物価は上昇する」という状態にあることを示唆している。
今年の賃上げは、消費の増加をもたらすには力不足
連合の中央執行委員会は「2015年春闘のベースアップを2%以上要求する」との方針を決めたが、経営側からは「高すぎる」と警戒する声があがっていると報道されている。2014年度は政府が企業に賃上げを要請するという異例の行動に出たことも加わって、春闘賃上げ率は2.19%と2000年代に入ってから最高となった(厚生労働省が労働組合のある民間主要企業を対象に集計)。とは言っても2013年度の1.80%からわずかに上昇したに過ぎないし、消費の増加をもたらすには力不足だ。
過去の春闘賃上げ率を見ると、消費者物価が下落して一人当たり賃金が減少した時期でも1%台の半ばだった。この関係からみると、消費者物価上昇分をカバーできていないのはもちろんのこと、消費税の増税分を除いた物価上昇分を補うほどにも賃金は増加していないと見られる。
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