その政治的な結果が、上述したようなアベノミクスの主要部分に対する反発なのだ。日本商工会議所の調査では、会員企業の38.8%が1ドル=100~105円のレートが望ましいと回答し、30.5%がさらに円高の95~100円の水準を選択している。円安による悪影響が大きすぎるとして、自民党の二階俊博総務会長は日本銀行に金融緩和策の変更を求めている。
安倍首相は10月3日の国会で、大企業や輸出業者は円安で得た利益を中小企業に還元すべきであると発言しているが、実質賃金の引き上げ勧告と同様、事はそんなに簡単な話ではない。
消費増税の悪影響は2カ月で収まらなかった
財務省および日銀は安倍首相に対して、消費税の引き上げが経済に悪影響を及ぼす期間は1~2カ月を超えないと約束していた。だが、その約束もまた結局はウソに終わった。安倍首相自身のアドバイザーのキーマンの1人である本田悦朗内閣官房参与(静岡県立大学教授)は、日本は「不況の一歩手前」であると懸念しており、2度目の消費増税を延期するよう首相に進言している。
アベノミクスの仕掛け人の1人であり、首相を09年から指南している山本幸三衆議院議員も同じ主張だ。先日、ほかの国会議員に対して「今の経済指標から見れば、予定どおりやるのは無理だ。1年半くらい延ばしたほうがいい」と発言している。本田教授の見解と自身の主張のすり合わせについても言及している。
予定どおり10%への消費増税を進めさせるために、財務省および日銀が安倍首相に主張している主な内容の1つは、増税を行わなければアベノミクスが失敗に終わったと認めることになってしまう、というものだ。
過去の過ちを認めたくないがために間違いを継続するというのは、かつて福島第一原子力発電所の護岸をより高くするべきとの声を無視した際の東京電力の思考と同じものだ。
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