日本人がまだ知らない、図書館の可能性 菅谷明子×大崎麻子「グローバルママ対談」

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古典は大切、でも古典でなくてもいい

――地域でのつながりがなかなか持ちにくい社会になっている中、図書館というのは、同じような環境にあって、同じような課題に直面している地域の人たちをつなげるハブのような役割を、もっと担えるのではないかと思うのですが。

大崎:そうですよね。私も講演などで呼ばれて全国に行くことが多くて、特に男女共同参画センターにはよく行くのですが、センターも含めていわゆる箱モノと言われる公共施設が多いですね、日本には。私、実は小学校に行くのがあまり好きではなくて、放課後に図書館に行くのが楽しみだったんです。学校が好きな子どもはいいですけれども、第三の場としての図書館があれば、私みたいに救われる子どもたちがきっといるはずです。学校の図書室とは違った本の読み方を体験できる場として、もっと存在感を発揮してくれたらいいなと思いますね。

菅谷:アメリカの図書館は、先ほどお話ししたように飲食OKだったり、カーペットで寝転がれる空間があったりと、とにかくカジュアル。日本では考えられないかもしれませんが、だからこそ子どもたちが来るという側面もある。図書館を楽しい場所にする、という意識をもっと持てたらいいですね。

大崎:先ほどはIBのディプロマを取った息子の読書ぶりについてお話しましたが、一方で、小学校6年生の娘は最近の児童文学や時にはハウツーもののような本ばかり読んでいるのが目について、古典を読まないので少し心配していました。そんな時、図書館の児童書コーナー担当の司書の方々に向けておすすめの児童文学作品を紹介したコラム集『かんこのミニミニ世界児童文学史』(赤木かん子著)を読んだのです。すると、娘が読んでいた児童文学がけっこう取り上げられていたんですね。私が勝手に古典がいいという固定観念を持っていたことに気付かされました。

例えば、図書館に子どもの読書について相談に乗ってもらえる司書さんが常にいて、子どもの興味関心などをお話しすれば、最近の児童文学の傾向を踏まえておすすめの作品を教えてくれる、といったことがあれば親としてはとても心強いのではないかと感じました。

――本のプロフェッショナルから、親も定期的に学べたらいいですよね。

菅谷:アメリカでは、日本でいう年長さんの時期から「図書館学」として、本の読み方を学べる時間があって、小さいうちから本を読む習慣をつけようとしています。私も実は、大崎さんと同じように古典を読むべきだと考えていたふしがあったので、一度司書の方に「なぜ古典を読むべきで、現代文学ではダメなのか」と聞いてみたことがあったんです。

すると「古典には複雑な感情を持った登場人物が設定されている。現代文学はこの人はいい人でこの人は悪人という風にしてしまっている作品が多くて、世の中の複雑さを反映していない」と言うのです。なるほどと思いましたね。残ってきた名作には、そういう複雑な感情があるということを理解した上で、世の中の複雑さを知ることができるという側面が、読書にはあるのではないでしょうか。

あと、私の娘の読書の仕方について先生から指摘された話をしましたが、登場人物に自分を投影する読み方も別に悪い訳ではありません。逆に親の立場からすると、どんな本を読んでいるのか、どんな登場人物に自分を投影しているのかということは、子どもの心理状態を知れるヒントになります。例えば、急にいじめがテーマの本を読み出したら、何かあったのかもしれないと考えることもできます。

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