今年の「ノーベル経済学賞」を解説する:下 ティロール教授、授賞までの軌跡
2014年のノーベル経済学賞を受賞した、ジャン・ティロール教授。その研究はどこがすごいのか。現実社会のいかなる問題を解決しうるのか。日本で翻訳されている唯一の単著『国際金融危機の経済学』の翻訳を手掛け、ティロール教授との親交も深い一橋大学経済研究所教授、北村行伸氏に、2回に分けて解説していただく。
第2回の今回は、ティロール教授がノーベル賞を受賞するまでの軌跡を紹介する(第1回はコチラ)。
ティロール教授についての、経済学者としての貢献やその特色については、前回述べたとおりである。今回は、20年以上に及ぶ個人的な交流の中で感じた、畏友としてのジャン・ティロールや、今回のノーベル賞受賞までの道のりで遭遇した、いくつかのエピソードを紹介しておきたい。
今回のティロール教授の受賞は、彼の卓越した業績に与えられたものであることは疑いのないところではあるが、その授賞のタイミングという意味では、ティロール教授の主要な共同研究者であり先達であったラフォン教授の没後10年ということを忘れてはならない。
実際、2014年度のヨーロッパ経済学会、エコノメトリック・ソサエティ欧州年次総会は、8月25日から29日までラフォン教授の没後10周年を記念して、トゥールーズ第1大学で開催され、ヨーロッパ中の主要経済学者に加えて、北米、日本を含むアジア、オセアニアなどから2000人を超える参加者が集まった。
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