得意技と必殺技・パナソニック対タニタの「活動量計」対決!《それゆけ!カナモリさん》

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■得意技のパナVS必殺技のタニタ

 記事で紹介されているパナソニックの「デイカロリEW-NK30」のウリは、「ダイエット目標設定」。減らしたい体重を入力すると、一定期間で目標を達成するのに必要な1日の消費カロリーが自動で設定される。目標設定まであと何キロカロリーの消費が必要で、そのためには時速何キロで何歩歩くなど具体的なアドバイスがある(日経記事より)という。実売価格で4000円前後と、手ごろな価格に設定されている。

 一方のタニタの新製品は「カロリズムスマートAM-121」。前機種の容量を40%縮小するなどの改良を加えたというが、何よりのウリはタニタの独自技術にある。記事中には記述が小さいが、消費カロリーや脂肪燃焼量のほか、安静時の代謝などを計測・表示するという。

 ぼーっと座っている時も、寝ている時も、「基礎代謝」によってカロリーを消費している。つまり、1日分丸ごとの消費カロリーを元に、「摂取カロリー < 消費カロリー」を実現すべくトライできるのだ。そのメカニズムはタニタのホームページに詳しいが、安静時だけでなく、パソコンに向かって仕事をしているとき、掃除をしているとき、読書時などあらゆる場面でセンサーが運動を探知し、消費カロリーを測定するという。それこそが、タニタならではのUSP(Unique Selling Proposition=競合が実現し得ない自社独自の提供価値)である。実売価格は競合のパナソニック製と比べて倍の8000円前後だ。

 ダイエットに関しては、タニタは計測器メーカーとして体重計、体脂肪計、体組成計、血圧計、歩数計などの専門。特に体脂肪計はシェア?1だ。それだけではない。自社の社員食堂のメニューをまとめた『体脂肪計タニタの社員食堂 500kcalのまんぷく定食』(1200円、大和書房)が、2010年1月末の発売から約7カ月で、90万部近くを販売。「ダイエットのサポートといえばタニタ」というニッチな領域でのブランド価値を高めている。

 ダイエット計測機器、活動計の精度のスペシャリストに対する家電業界のリーダー企業、パナソニックの戦略は、リーダー企業の定石「同質化戦略」である。松下電器時代、下位メーカーが開発・上市してヒットし始めた商品をスピードに勝る開発力を活かして迅速に模倣。強大な販売力であっという間に市場を席巻するのが「得意技」であった。単に模倣するだけではない。同等の製品を規模の経済で低価格にて商品化する「コストリーダーシップ戦略」の典型でもある。

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