なぜDeNAの観客数は3年で42%伸びたのか 横浜DeNAベイスターズ・池田純社長に聞く
――具体的には、どんな方法を取ったのでしょうか。
当たり前のことですが、数値目標の設定とそれを達成するための戦略、そして達成度に対する振り返り。つまり、どんな戦略で観客動員数をどれだけ増やしたいのか。そしてその結果がどうだったのかを明確に伝えるということを徹底しました。社内の全社経営会議は四半期に1度やっていますし、スタジアムの人にも半年に1度、参加してもらって情報をシェアしています。
横浜スタジアムの所有は横浜市や市内の企業が出資する第3セクター。球団とは全く別組織で、球場内の広告看板の収入や、飲食の収入は球場に入る。観客動員数の増加は球団にとってはチケット販売の収入増につながり、球場にとっては飲食収入や広告看板の収入増につながる。
最初は30代の男性サラリーマンをターゲットに
――3年間で現場の意識が変わったということですが、決め手は何だったのでしょうか。
結局は、目に見えてお客さんが増えたことだと思います。
球団スタッフにとっても、選手にとっても、球場のスタッフにとっても、これはとにかくうれしいことです。何の説明も要りません。2014年シーズンは、大入り(球場キャパの、ほぼ9割が埋まっている状態)が23回ほどありました。
――主催ゲームは72ゲームでしたから、その約3分の1が大入りだったということですね。戦略の組み立て方は?
初年度(2012年)は買収してからすぐにシーズンが始まってしまいましたので、まさに手探りでした。とにかく話題になることをゲリラ的にやりましたが、振り返ってみれば、大半は参入初年度だから臆面もなくやれたことでしたね。ちょっとおどろおどろしいデザインのポスターを作ったときなどは、街の景観に合わないという理由で、横浜市からバス停への掲示を止められたりもしました(苦笑)。
――ゲームがつまらなかったら全額返金という企画もありましたね。
あれは想定を遙かに超える返金要求があったので、キャンペーンはそれっきりになりました。
――それでも初年度は前年比で観客動員数5.7%増という結果を残しています。
実は初年度は伸びた理由がわからなかったんです。IT企業としての強みは、全てデータで管理できていればこそ発揮できるのですが、その肝心の観客に関するデータが全くとれていなかったんです。例えばファンクラブ入会の動機も、ファンクラブ会員が何を望んでいるのかも把握できていませんでした。
――ファンクラブは会員にアンケートを取るのも容易だと思いますが、ファンクラブ会員以外のデータはどうやって取るのでしょうか。
いくつか方法はありますが、球団が運営するチケットのインターネット販売サイト「ベイチケ」にできる限り集約する戦略を進めたことが大きいですね。
――ベイチケはいつから始めたのでしょうか。結果はどうでしたか?
参入初年度からです。会員登録をお願いしているので、年齢や居住地域、職業などの属性がとれます。登録時にご提供をお願いしている情報は、精査をして項目を随時変えてきました。チケットの販売ルートはあちこちに分散していましたが、今では全販売量の半分以上がベイチケルートです。
すると、30代のサラリーマン男性が増えていることがわかりました。1年目はこの層を狙って増やしたのではなく、結果を分析してみたらこの層が増えていることがわかったという順番です。勤務先は関内駅周辺や桜木町駅、みなとみらい駅、横浜駅、磯子、鶴見、川崎あたりまでです。居住地では初年度は京浜東北線の港南台あたりまででしたが、2年目以降はさらに南、藤沢、茅ヶ崎、鎌倉あたりまで広がっています。
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