「人を外見で判断」が根本的に問い直されている訳 私たちはすべて内面を問われる社会にいる

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ビジネスの現場に話を移す。

私が企業で働いていたとき、アメリカ人の同僚がいた。彼が驚いたのは、日本で採用募集のときに顔写真や年齢やらを要求することだったようだ。それは実力とは無関係であり差別を助長するらしい。実際にアメリカではあくまで本人の能力こそが重要という考えのもと、履歴書ではそれらは不要だ。

「といっても、見た目やファミリーネームで何らかわかるんじゃないの?」

「いや、だからそういうのを意識しないのが重要なんだ」

テスラやNVIDIAが宣言する規範

企業は自社だけではなく、取引先にも従業員に同様の対応を求める。たとえばテスラの「取引先行動規範」(Tesla Supplier Code of Conduct)を見てみよう。テスラは取引先にも「人種、肌の色、宗教、婚姻状況、年齢、出身国、祖先、身体あるいは精神障害、医療状態、妊娠、遺伝情報、性的指向、(略)等で差別されるべきではありません」としている。

またGPU(画像処理半導体)で有名なNVIDIA(エヌビディア)も取引先に「労働者の安全確保、緊急事態への備え、長い作業時間への対応」を求め、さらに「労働者は自発的でなければならず、仕事をいつでもやめることができるものとします」としている。

もちろん強制労働を想定しているのは承知している。またISO26000やSA8000などの国際規格にのっとって、これらの規範が作られている。

ただ、その先を考えてみよう。日本企業では優秀な社員が辞めようとすると上司らが全力で止めにかかるが、これはおそらく近い将来には労働者の自発性を確保していないとみなされるだろう。『辞めます』『考え直せ』が批判の対象となる。

ところで先日『ROCKIN' ON JAPAN』2022年3月号にシンガーAdoさんの興味深いインタビューが載っていた。『うっせぇわ』が爆発的ヒットになったAdoさんといえば素顔を出さない歌い手として知られる。Adoさんは「今もなんですけど、自分に対してコンプレックスがすごくて。容姿から言動から性格から、何から何までほんとに大っ嫌いで。(中略)このままの自分でいるのはすごい嫌だって思い続けていた」と語っている。漂白化される社会で、リアルな自らを消し、アバターを作り上げた歌手がヒットしている現実は興味深い。

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