埼玉・小川町メガソーラー、大量盛り土への大懸念 経産相が異例の見直し勧告、事業者説明に虚偽疑惑
こうした地元住民、町長、町議会の意見を反映し、熱海市の土石流を強く意識したのが、昨年12月27日に埼玉県の大野元裕知事が経産大臣にあてた意見書。本文の前の断り書きには、「事故の発生に繋がれば地域住民の生命・財産に甚大な被害が生じる恐れ」「中止を含めた事業計画の見直しも検討されなければばらない」と強い調子の文言が並んだ。
また1月25日に経産大臣に送られた環境大臣意見は、「本事業は発電以外の事業要素を含むとの疑問がもたれる計画になっている」として、ずばり地元・小川町の疑念を追認している。
環境アセス手続きの中で事業者が示した説明の「ウソ」
2月22日に発表された経産大臣勧告も、盛り土に焦点があてられ、大量の土砂の搬入を前提とした計画を見直すよう求めた。盛り土をめぐっては、土砂災害を引き起こす恐れのほかに、持ち込まれる土についての不安がある。
小川町飯田の農業者(52歳)はその不安をこう説明する。「よそから持ち込まれる土がどんな土かわからないのは、気持ちが悪い。僕も含め、有機農業をしていると土づくりが命だけに気になる。もしも有害物質が含まれていると、水や川を伝って汚染が広がってしまう」。
国の環境アセス制度では、事業者が作成した環境アセス準備書について、住民や関係者が意見書を事業者に送り、事業者が意見の概要をまとめ、自社の見解をつけた文書を経産省に提出する仕組みがある。
小川エナジー合同会社は昨年8月31日付の「意見の概要と当社の見解」の中で、「外から持ち込まれる土についての不安」に対して「搬入土の安全性を確保します」と強調した。
安全確保の方法については、「株式会社建設資源広域利用センター(UCR)の土のみを利用する」と明記しており、「土搬入に当たっては、地方公共団体などで構成される『UCR利用調整会議』により搬出土量・受け入れ地の調整が行われ、受け入れ地や土壌分析結果により安全性が確保された土のみを取り扱う」と説明している。
この点について、経産大臣勧告は「土質、土壌などの受け入れ条件について準備書に記載されておらず、適切な検討がされているか確認できない」としたうえで、土砂の搬入が必要であれば、土砂の受け入れ条件を示して地域住民に説明し、受け入れる土砂が発生する工事名、工事場所、搬入土量、土質などを搬入前に公表するよう求めている。
UCRは、首都圏の5自治体(東京都、埼玉、神奈川県、横浜、川崎市)と民間建設会社などが出資して1991年に設立された。建設発生土のリサイクルを進めることで、自然環境への負荷を減らし、建設コストを削減することを目的としている。
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