埼玉・小川町メガソーラー、大量盛り土への大懸念 経産相が異例の見直し勧告、事業者説明に虚偽疑惑

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環境省が意見を求めた東京農工大の五味高志教授も「地質調査の実施による現地盤の状態を確認する必要」「降雨時の地下水の状態やすべり面を確認しつつ、過去に崩壊したところは表層地盤が浮きやすくなっていることも考慮し、対策の必要性を検討する必要がある」などと指摘している。

小川町、町議会、埼玉県知事の懸念

土が盛られる場所の下流域住民や地盤安定化の専門家だけが心配しているわけではない。小川町住民はこれまで、外から搬入された土による盛り土工事の計画に反発してきた。

というのも、小川町メガソーラーの事業予定地周辺では2018年12月から2019年前半にかけ、土地を取得した事業者が残土処分事業を行うとする説明会を計4回にわたって開いた。この時の事業者の説明によれば、運び込む残土の量は、150万立方メートル。残土処分場を計画した会社と、小川メガソーラーの事業者・小川エナジー合同会社は主要メンバーが重なる。

当然、地元では「メガソーラー事業は残土処分を兼ねたものではないか」との疑念が広がった。残土処分事業についての地元説明会が行われる前に、事業者の関係者は地元有力者を訪ね、「根回し」を試みたようだ。当時、笠原地区の区長で、現在は小川町議会議員の笠原英彦氏(70歳)は「うちにやってきた会社の関係者は、世間話の中で、『残土は儲かる』と話していました」と明かした。

1日200台を超える大型トラックが大量の残土を運び込む計画に対し、事業予定地に隣接する3地区は2019年4月に総会を開き、反対決議を上げた。2020年1月、残土処分事業の計画がその後どうなったか何の説明もないまま、今度はメガソーラー建設についての説明会が開かれた。同年2月、松本恒夫・小川町長はメガソーラー建設計画についての意見書を埼玉県知事に提出。「事業地内での切り土・盛り土の実施」として、盛り土に必要な土は事業地内で調達せよ、と求めた。同年12月、小川町議会は「さいたまメガソーラー事業での土砂搬入に強く反対する意見書」を埼玉県知事に出した。

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