埼玉・小川町メガソーラー、大量盛り土への大懸念 経産相が異例の見直し勧告、事業者説明に虚偽疑惑

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しかしそもそも、UCRの土のみを受け入れるとの事業者の説明に信憑性があるのだろうか。UCRはホームページ上で受け入れ地の場所と事業者を明示しているが、小川町メガソーラーおよび小川エナジー合同会社は記載されていない。環境アセスの手続き中なのでホームページへの記載はないが小川エナジー合同会社はすでに受け入れ希望の申し出をUCRに行っているのか、あるいは受け入れを希望すればかなうためそうした手続きは必要ないということなのか。

UCRに聞いたところ、驚きの答えが返ってきた。「小川エナジー合同会社から受け入れ希望の話があったかというと、まったくない。希望があれば、受け入れ地として登録するかどうかについて、場所や法令の適合性、現地の交通状況、近隣とのトラブル状況、事業者が公共事業の入札参加資格を持っているかなど内規に基づく審査を行う。簡単に受け入れ地になれるわけではない」(総務課)。

環境大臣意見、経産大臣勧告とも、事業者がUCRの土のみを受け入れるとしても、その受け入れ条件を明記していないのは問題だ、と指摘した。しかし、あたかもUCRの土の受け入れ先となるかのように事業者が説明しているのは、虚偽に当たるのではないか。

もっとも、埼玉県知事、環境、経産両大臣が強く求めているように、事業計画を抜本的に見直して盛り土量を減らし、外から搬入する土をゼロにすれば、UCRの土の受け入れ問題は生じないことになる。

抜本的見直しが求められるが強行を止める手立てはない

小川町のメガソーラーは、国の環境アセス制度の対象に太陽光発電施設が追加された2020年4月以降、事業の抜本的見直しが求められた初めてのケースだ。とはいえ、現行の環境アセス制度には、事業者が事業を強行しようとすれば止める手立てはない。事業者は勧告を受けて環境影響評価書を作成し公表する。評価書の内容が不十分であれば、経産省は評価書の変更を命じることができるが、通常は評価書の作成公表時点で環境アセス手続きは事実上終了し、工事の許認可手続きが進められる。

今後の焦点は、ひとえに「小川エナジー合同会社」の対応にかかる。経産大臣勧告の発表直後に同社に電話し、対応を聞いたところ、「取材には対応しないし、コメントもしない」(合同会社の加藤隆洋氏)との答えで、UCRに関連した点についても「取材には対応しない」の一点張りだった。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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