「いじめは悪いこと」と諭す人に欠けている視点 「他人からの期待や評価」が問題の隠蔽を招く

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しかし、「人と違ってはいけない」というのは、人の認め方を知らずに育つことでもあります。自分と違うことに対しては、警戒心を抱くものですが、その違いというのは、実はクリエーティブな協働につながっていきます。

僕は大学時代の4年間、グループワークを通して、意見も背景も違う人間とバチバチ議論して物を作っていくという経験をしました。ですから、意見が違っても仲が悪いわけではない、ということを知っています。しかし、小中学校では、それを実感するための勉強はなかなかできていません。教育の現場から変えていかなければならないでしょう。

大切にしたい価値観を固める

『モンク思考』には、「自分のダルマを生きる」ということが書かれています。自分がなにかを達成しようと努力しているときに、それを邪魔してくるものがあります。

立ちはだかる障害、面倒だけどやらなければならないこと、学んだり練習したりするのが恥ずかしいと感じるプライドやエゴ。

それらに対して「ノー」を突き付けてねじ伏せ、目標に向かって進んでいかなければなりません。そして、何かに対して「ノー」と言うときは、より一層強く燃え盛る「イエス」が必要です。

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僕は、高校生ぐらいまでには、自分の人生についてや、自分がどういう人間になりたいのかという目標を強力に持つことが望ましいと考えています。

他人って、羨ましいものです。僕もすごく人を妬んでしまいます。しかし、高校生の時に、世界史の資料集を丸暗記しているとか、古語辞典が1冊頭に入っているとか、飛び抜けてすごい奴がいることを目の当たりにして、考え方が変わりました。

「こいつらはすごい。でも、追いつこうとしても、それは自分の理想ではないな」と。

大学に入ると、今度は、同級生の多くは起業していて、僕よりもうまくいっている奴ばかりでした。本を出したり、政治の世界に入った奴もいます。でも、嫉妬で足を引っ張ることを考えはじめると、自分の人生はうまくいかなくなります。

でも、自分の目標が強固に固まっていれば、不要な妬みを抱かずにすみますし、妬みを抱いたとしても、自分のエネルギーにすることができるようになります。

子どもたちには、自分が人生を通じて大切にしていきたい価値観、その大原則をまず固めてほしいですし、そのうえで、後は、やりたいことを1つでも多くやれと伝えたいですね。

(構成:泉美木蘭)

山崎 聡一郎 教育研究者、ミュージカル俳優

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やまさき そういちろう / Soichiro Yamasaki

合同会社Art&Arts代表。慶應義塾大学SFC研究所所員。慶應義塾大学総合政策学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。修士(社会学)。学部卒業時には学位記授与学部総代に選出されたほか、卒業論文は優秀卒業プロジェクトの選定・顕彰を受けた。また、在学中英国オックスフォード大学に短期留学、シェイクスピア演劇と政治教育への演劇的手法の導入方法を学び、単位取得。研究テーマは「法教育を通じたいじめ問題解決」。著書に『こども六法』(弘文堂)がある。法と教育学会正会員、日本学生法教育連合会正会員。2016年より劇団四季「ノートルダムの鐘」に出演するなど、ミュージカル俳優としての顔も持つ。

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