スマホ依存の是非は別として、「100年3ヒロイン戦略」のスピード感は、スマホ時代特有のせっかちな視聴感覚に、実によく合っていると思うのだ。
続く成功要因として挙げられるのは、先に書いたような高齢層の新規視聴者流入に貢献したであろう、「るい編」以降の展開である。
戦争や死別、貧困、さらには安子のアメリカ行きと、暗いエピソードでいっぱいだった「安子編」の後半から、「るい編」に変わった瞬間、画面ががらっと明るくなった気がした。
同時に、脚本にも徐々に喜劇テイストが高まり、いい意味で「普通の(NHK大阪制作)朝ドラ」的な安定感を増してきたことが、高齢層の新規視聴者流入に貢献したと思われる。
特筆すべきは、48歳(撮影時。現在は49歳)で18歳を演じた深津絵里のルックスと演技力である。実年齢を知りながら見ていた私は、ちょっとドキドキしながら見ていたのだが、個人的にはほとんど違和感がなかった。
また、錠一郎役・オダギリジョーのとぼけた味も、人気に貢献したと思う。1960年代の大阪生まれとして言わせてもらえば、錠一郎のような「何の仕事をしてるかようわからん、髪の毛の長いオッサン」は、昭和の大阪でよく見かけたものだ。
「ひなた編」のヒロイン・川栄李奈の持つ演技力
3つ目の成功要因として、こちらは多少、今後への期待もこめて挙げたいのは、「ひなた編」のヒロイン=川栄李奈の魅力である。
彼女の演技力について、興味深いコメントがある。『連続テレビ小説 カムカムエヴリバディ Part2 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)に掲載された、俳優・浜野謙太による川栄李奈評である。
「あるときセリフを思い出せなくて、川栄さんの台本を貸してもらったら、書き込みも付箋もなく、まっさらで。台本には何も書かないタイプらしく『マジかよ、ホント天才だな!』と突っ込んだんですが、のちに俳優の大先輩に『芝居というのは、他者とのセリフのやり取りで必然性が生まれる。自分のセリフだけをマーカーで塗るのは自分本位』と指摘され、川栄さんは正しかったんだと、反省しました」
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