「異常な朝ドラ」カムカム終盤に期待が高まる理由 散らばった伏線の「ミラクル回収」成功への確信

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そんなこんなで、私含む初回からの継続視聴者は、最終回が近づくにつれて、時代や距離、また内容的にもまったくバラバラな伏線群が、最後の最後で一気に、一網打尽に回収される、言わば「ミラクル回収」への期待が高まっていて、それが番組へのロイヤリティを高めていると考えるのだ。

しかし私は、「ミラクル回収」に成功する確信を持っている。なぜなら、『カムカムエヴリバディ』を手掛ける藤本有紀の脚本で、向田邦子賞を受賞した時代劇=NHK『ちかえもん』(2016年)の最終回における、実に痛快でアクロバティックな「ミラクル回収」に腰を抜かしたのだから。

今後の展開を予想してみる

それにしても、『カムカムエヴリバディ』、今後どう展開していくのか全然わからない。そこで野暮ながら、ちょっとだけ予想をしてみたいと思う。

この朝ドラ、ポイントポイントで、過去の朝ドラを見るシーンが挿入される。「安子編」の最終日(38話)には、朝ドラ第1作『娘と私』(1961年)の最終回が出てきたし、ひなたは登場初回(71話)で『おしん』(1983年)の初回を見た。

私の予想は、最終回あたりで、藤本有紀がかつて手掛けた朝ドラ『ちりとてちん』(2007年)が出てくるのではないかというものだ。

『ちりとてちん』――平均視聴率は振るわなかったものの(15.9%)、コアなファンを得て、DVDボックスがバカ売れしたという伝説的朝ドラ。

伝説を彩るのは「神回/神シーン」の存在だ。『ちりとてちん』の42話、落語家・徒然亭草若(渡瀬恒彦)が高座に復活するシーンは、2019年にNHKが募集した「朝ドラ100 思い出の名シーンランキング」の1位に輝いた。

私の予測は「ミラクル回収」後、「復活」した安子が、るいとひなたと一緒に、この回を見るというもの。年齢を計算すると、2007年に安子は82歳、るい:63歳、ひなた:42歳。十分に可能性はあろう。

ちなみに、『ちりとてちん』の「神回」=42話で、徒然亭草若がかけた落語は、「ひなた編」と同じく、京都を舞台とした「愛宕山」だった。

スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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