巨額の債務は過去、何十年にもわたって貧困国や低所得国に苦難をもたらしてきた。ところが今、世界経済にのしかかる持続不可能な借金の脅威は、世界で最も豊かな国々が発生源となっている。
アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、そして日本における記録的、あるいはそれに近い水準の債務が、世界中の経済成長を阻害し、金融不安の種を撒き散らす脅威となっているのだ。
各国内では、これは本来なら医療、道路、公営住宅、技術革新、教育などに充てられるべき資金が、利払いに消えていくことを意味する。
増加し続ける借り入れは借金のコスト(金利)を押し上げ、税収を一段と食いつぶすようになった。それは同時に、企業融資、消費者ローン、自動車ローン、さらには住宅ローンやクレジットカードの金利上昇を招き、インフレ(物価上昇)を助長する要因にもなりうる。
とくに懸念すべきポイント
中でもとくに懸念すべきは、現在のアメリカのように経済が比較的健全で失業率が低い状況においても膨らみ続ける「過剰債務」のせいで、景気後退局面における政府の対応余力が奪われていることだ。
ハーバード大学教授(経済学)のケネス・ロゴフは、「いざというときに大胆かつ迅速に支出できる能力を保持しておく必要がある」と語る。
金融危機やパンデミック、戦争が起きたらどうなるか。AIによる社会構造の変化や気候変動がもたらす災害などにより、失業対策などの社会保障支出が急に必要になったらどうするのか。
国家債務がすでに空前の水準にある状況では、短期間に借り入れを大きく増やすことは以前より難しく、調達金利もかさむ。
先日スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムでは、米大統領ドナルド・トランプが注目を独り占めする中、その脇では各国の財務相たちが、軍備増強から送電網の更新に至るまで、膨らみ続ける財政支出に対する資金調達能力に頭を悩ませていた。
政府の借金は、経済が好調で金利が低い時期には成長を支え、不況時には支出を支える助けとなる。過剰債務のサイクルは、2008年の金融危機と景気後退を契機に始まった。


















