「保育園の現地調査」義務なくす規制緩和は問題だ 不適切な保育による事故がなくならない中で…

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著者が代表を務める「保育園を考える親の会」でこのパブコメ募集が伝わると、保護者からは驚きの声が上がった。不祥事が相次いでいる状況で、なぜ「見なくていい」という話になるのかと、多くの人が首を傾げた。

保育施設での事件や事故が起こるたびに、なぜ防げなかったのか、なぜ子どもを守れなかったのかという反省が巻き起こる。死亡事故では検証委員会が設けられることがようやく定着してきたが、それらの報告書を詳しく読むと、事故が起こる前からさまざまな形で保育の質の低下が見られる場合が多い。

このところの急激な待機児童対策で保育施設は多様化し、保育士不足は現場の余裕のなさや資質のバラツキも招いている。待機児童数が減少に向かった今、保育施策の重点を量から質へと傾けていかなければならない時期にきている。そんな折、指導監査の実地義務の削除案は、唐突に現れたように見えた。

コロナ対策というが…

事の発端は、内閣府が行っている地方分権改革の提案募集だった。この提案募集は、「個性を活かし自立した地方をつくる」ことをミッションとした地方分権改革の一環として、個々の自治体からの提案を募集し、規制緩和や権限移譲などにつなげて地方分権を推し進めることを目的としている。対象は行政のあらゆる領域に及んでいる。

今回の指導監査実地要件の廃止提案も、保育施設のみならず、高齢者施設・障害者施設などの社会福祉施設全般を対象としている。最初にこの「指導監査の実地義務の削除」を提案した自治体は大阪府茨木市。これに、札幌市、郡山市、川口市、富津市、川崎市、福井市、佐久市、関市、浜松市、滋賀県、草津市、八尾市、羽曳野市、府中町、山陽小野田市、徳島県、香川県、高松市、鹿児島市などが共同提案者として名を連ねている。

提案には「昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止等の観点から、実地によらずとも監査等の実施ができるよう、書面やリモート等による方法も可能としていただきたい」とある。つまりコロナ禍で施設に行けないから、実地義務を外してほしいということだ。

現在のように保育園の休園が全国で多発している状況では、実地監査ができなくても仕方がない。しかし、あくまで時限措置として実地義務を緩和すべきであって、コロナ収束後も実地義務をなくす今回の改正は、コロナに乗じたものともとれる。

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