「保育園の現地調査」義務なくす規制緩和は問題だ 不適切な保育による事故がなくならない中で…

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保育の現場に赴き、保育のようすを目で見て、施設長と対話することは、その施設の状況を把握する方法として最も有効な方法だ。書類を何百枚、何千枚見てもわからないことが、一見でわかる場合もある。

「給食のおかずがスプーン一杯」とセンセーショナルに報道された兵庫県姫路市の認定こども園の不祥事も、施設を訪問した自治体職員が施設長との会話で違和感をもち、改めて立ち入り調査を行って、定員をはるかに超える子どもを預かっていたこと、保育士の人数も偽っていたことや、不正な労働契約が結ばれていたことなど、数々の問題が発見された。このとき、この施設が提出していた書類からこのような実態を読み取れていなかった。

現行の指導監査制度も、内容面や手法において改善されるべき点は多い。効率よく行うための検討も必要だ。しかし、監査の実効性を低下させてしまっては意味がない。

姫路市の事件の一番の被害者は誰だろうか。税金を不正に使われた市民も、大混乱になった保護者も被害者だが、一番の被害者は給食で必要な栄養量をとれず、基準を満たす人員での適正な保育を受けられなかった子どもたちだ。子どもたちは何かあっても自ら訴えることはできない。小さければ小さいほど自分を守るための力を十分に持ち合わせていない。しかも受けた不利益がその子どもの未来を揺るがすこともある。

「こども家庭庁」の理念に基づくなら

政府は2023年度の早い時期に「こども家庭庁」の設置を目指している。同庁は、子どもの権利条約の精神に立ち、「子どもを真ん中においた新しい行政体」となるという。子どもの権利条約とは、日本を含む190以上の国と地域で締結されている国際条約で、関与する大人たちに子どもを守ることや、現在・未来を通して子どもの利益を優先して考えることを求めている。

その理念に基づき、子どもの最善の利益を考えるならば、この改正案は適切といえるのだろうか。地方分権という異なる視点からの、異なる管轄からの要請だが、こういう場合にこそ「子どもを真ん中においた」判断をブレずに行ってほしいものだ。

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