提案に添えられた各自治体の意見には、実地監査ができないために指導監査実施率が低下してしまうことを気にしているものが多い。そこで、最新(2019年度)の保育所の指導監査の実施率を調べてみると下表のようになった。全体で政令を守れている自治体は62.5%しかない。ただし、「実地なし」で行った率を加えると20%程度上昇する。つまり、この改正は政令を守れていない自治体の現状を追認するものになる。
ちなみに2019年度は2020年1月から国内で新型コロナ感染症の発生が確認されていたが、緊急事態宣言は出されていなかった。「コロナ禍だから」という理由は後付けに見える。
ここで注目したいのは、実地による指導監査を100%実施している自治体も約半数あるということだ。つまり、自治体の格差が大きいということであり、ここで国の基準を緩めれば、自治体の意欲や財力による格差がますます大きくなっていくことが予測される。
行政にしかできないことがある
今回の指導監査の実地要件廃止を提案した自治体の意見の中には、「(コロナ収束後の)通常時においても事務効率化を図ることができる」といった内容も見られた。自治体が業務をスリムにしてコストを削減することは、税金を有効に使うために必要なことだが、こういった地域住民のために行政にしかできない仕事を削ることには慎重であってほしい。特にコスト削減を弱い住民(子ども)にしわ寄せるとしたら、それは本来の「自治」の理想から外れている。
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