「不適切保育」という言葉があります。文字どおり不適切な保育のことですが、主に子どもを身体的あるいは心理的に脅かしたり傷つけたりする保育のことを指しています。「虐待保育」とも言われます。筆者がアドバイザーをつとめる「保育園を考える親の会」に寄せられる相談にも「不適切保育」が心配される例があります。
「しつけ」なのか「虐待」なのか
例えば、3歳児がトイレに行く時間を決められていて、その時間以外に行きたいと言ったり、そのとき出なくて後でお漏らししてしまったりすると激しく叱られたり罰を与えられたりする、という事例があります。
保育者の側からは、バラバラに行かれると安全を把握できないのでルールを決めていて、守らせるために叱っているのだろうと思います。保護者はそのように説明されれば、「しかたがない」「しつけだから」と考えてしまいがちです。
しかし、このような保育には問題があります。激しく叱られたり罰を与えられたりすることで、子どもの心が深く傷つけられてしまうことがあるからです。トイレに閉じ込められたことがPTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、その後しばらく一人でトイレに入れなくなったお子さんもいました。
そこまでのことはなくても、子どもがトイレを強制されて苦痛を感じていたり、お漏らしを人前で叱られて自尊心を傷つけられていたりしていたら、保護者としてはいたたまれない事態だと思います。
排泄の自立には個人差があり、それぞれのペースが尊重されなくてはなりません。オムツがはずれた子どもでも、遊びに夢中になるとトイレに行くのを忘れてしまったり、先のことを予測してトイレをすませるのは難しかったりする場合は多いものです。
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