前向きな救済所「シブヤ大学」が今求められる訳 リスキリング圧力感じる大人はどう学ぶべきか
働き始めて2年ほど経った時に、「自分の言葉で話している感覚が持てない」と感じることが増えてきたんですね。会社の論理で考えて、会社の期待に応え、成績も挙げられるようになってきたけれど、自分の頭で考えて行動していることが少しずつ減ってきたように感じ、このままでいいのかな、と。
たとえるなら、「ヒットを打て」と言われて打席に立っているけど、それは自分がやりたくてやっているのか、実は、打席に立ちたくもないのに、立たされて打っているだけなのではないか、という感覚です。
大澤:人生の転機に、立ち止まって、自分自身について深く考えているところがすごいですね。
深澤:もちろん、会社の意思に染まること自体を悪いとは思っていないんです。組織のミッションを達成するために、組織の役割を意識して動くことに喜びを感じる人もいると思います。
でも、どちらにしても自分を主語にして、会社の資源を活用するんだという主体的な感覚を持っていることが大切じゃないかと思いますし、そのほうが健全だとも感じています。
自分が受けたい学びを、自分で開拓する
大澤:主体的な感覚は大事ですね。『ライフ・シフト2』には、「社会的開拓者」という言葉が出てきます。「シブヤ大学」のいちばんの特徴は、自分が受けたい授業を、自分で作ることができるという点です。
「楽器が弾けるので、楽器を教えたい」というふうに、教える側が作る授業は1つもありません。学ぶ側が、自分が学びたいことを企画して、先生を呼んで授業を作るのです。
1度授業を作ってみると、実は、作る側になるほうが、学びが多いとわかります。先生を探すにも、自分でいろいろなことを調べて調整しなければなりません。自分が学びたいことでもありますから、すごい熱量の授業ができあがるのです。
深澤:授業を作りたいという人とは、まずよく話し合います。たとえば、「楽器を学びたい」というとき、自分が弾けるようになって誰かを喜ばせたいのか、それとも、道具としての楽器や歴史を楽しみたいのか、なぜそう思ったのかなどを一緒に深掘りしていきます。掘っていくと、人によって根本の理由は違います。
すると、呼んだほうがいいのは、楽器の先生ではなく、生活について一緒に考えてくれる先生のほうがいいかもしれない、ということもあり、最初に想定していた企画と変わっていくことがよくあります。