AKB48が、「非メディア頼み」でも強い理由 意外に地道だからこそレジリエントな仕組み

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これは、ひとつのプラットフォームビジネスだともいえます。プラットフォームとは、元は自動車のシャーシ(車台)に由来し、ひとつのフレームで複数の車種を生み出すことからプラットフォームと名付けられたと言います。ここから転じてITの世界で、ひとつのシステムの上で多様なサービスを実現する仕組みのことをプラットフォームと呼ぶようになりました。AKBとは、各メンバーが多様な成長を見せ、ファンとの関係を作っていくためのプラットフォームであるわけです。

AKBというプラットフォームの上でメンバーが成長するドラマツルギーを運営していくために必要なのが、さまざまな差別化要素です。選抜における順位とか、どういう企画グループに抜擢されたとか、そうした各メンバーの成長劇をわかりやすくするためにこそ、すでに説明したような複雑な構造は、AKBの中に生まれたのです。

AKB48にまつわる物語は、ファンの数だけ存在する

ファンに対してAKBでは、チームや48全体を推すというより、メンバーをひとり決めて推すよう、むしろ促しています。そうしたAKBの各メンバーを見守るファンの視線は、各メンバーを支えたいという気持ちに満ちあふれてきます。

そもそもコミュニケーションの本質として、コンテンツの「意味」は見る側の事情によって大きく変わります。ひとつの映画や小説に多様な感想があるように、ひとりのアイドルの成長劇について、ファンそれぞれが見いだす意味合いは個々に違います。ファンが描くメンバーに見る自分なりの理解、その唯一性がファンたちを引き込んでいきます。

そして、ファンが自分が推す特定のメンバー(いわゆる推しメン)を応援する中で、彼女たちの成長劇は、自分の応援との相関関係でとらえ直されます。こうして、自分と推しメンの関係は「物語」化し、ファンたちを深くとらえるのです。

ファンが推しメンとの間で体験した「物語」は、そのファンにとって独自の、唯一無二の歴史であり、ファンにとってかけがえのないものになります。いやいや、そこで、推しメンのほうはそのファンのことを知らないだろう、ファンなんて大勢の中のひとりで、両者がお互いを認識しないと「物語」なんて言えないだろう、と論じてはなりません。そんなことは百も承知でそれを見ないというのが、人間がつねに持っている「イデオロギー」というもので、それを言ったところで無粋という以上の意味はないのですから。

だいたい、本論を読んでいてくれるだろうオジサンビジネスマンだって、いろんな「イデオロギー」にまみれているものです。たとえば、会社に精いっぱい尽くせば報われる、とか。いや、これは言いすぎましたか。

「握手」の意味、性別を超えた「友情」や「親愛」

ただ、それを補強するような仕組みをAKBが準備していることが重要です。AKB総選挙の「投票権」や「握手券」をCDに封入して販売し(ここで販売して いるのはCDか「投票権」「握手券」か、という質問はしないでください。けっこう微妙なので〈苦笑〉)、ファンの「推す体験」性を高めています。

特に「握手券」でメンバーと握手ができる「握手会」は重要です。人間のコミュニケーションの中で最も深い接触コミュニケーションの中で、アイドルが唯一できることは「握手」です。

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