AKB48が、「非メディア頼み」でも強い理由 意外に地道だからこそレジリエントな仕組み

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「48」は原則3チームで構成される(JKT48がチームJとチームKⅢしかないように、グループによっては48人にならないものもある)わけですが、元祖であるAKB48だけはさらに特殊で、A、K、Bの3チーム以外に、チーム4があり、さらにまったく「チーム」のフォーマットから外れたチーム8もあります。このチーム8はトヨタ自動車とのコラボで生まれた企画グループで、全国47都道府県から1人ずつ選抜した総勢47人で構成されます。

なお、あくまでこれは正規メンバーの構成で、これに属さない「研究生」「候補生」というのも存在し、おかげでAKB48の人数は150人近くにまで膨れ上がっています。

複数のチームを兼任するメンバーも

こうした複雑な構造の中で、もちろんメンバーは特定の「48」の「チーム」に所属するわけですが、グループが複雑化するに従って、複数のチームを兼任するメンバーも生まれ、たとえば現時点ではSKE48チームSの松井珠理奈がAKB48のチームKを兼任するほか、同じくSKE48でチームEの松井玲奈は関連グループである乃木坂46を兼任していたりします。

このような複雑極まりない構造に、さらに複雑度を加えるのが、「48」「チーム」の枠を超えた構造です。いちばん有名なものが「選抜」というシステムで、後述する「AKB選抜総選挙」や「AKB選抜じゃんけん大会」によってAKBグループ全体から新シングルなどのために選抜される集団があり、特に選抜総選挙の上位7人を神7とも呼びます(総選挙の初期に上位7人が変わらなかったことからこの呼び名が生まれたが、現在では総選挙の上位7人の名称として使われる言葉に変わっている)。そのほか、「渡り廊下走り隊」(2014年解散)や「フレンチ・キス」などの派生ユニットもあります。

と、これだけを頭に入れるにも知恵熱が出そうなのですが、問題は、構造が複雑であることそのものではなく、どうしてこんな複雑な構造を形成したのか、というところにあります。

AKB48グループはプラットフォームビジネスである

まず、AKBの仕組みを供給側、つまり各メンバーの側から見ると、AKBとはあくまで自分がアイドルとして活動するための枠組みにほかなりません。秋元康氏をはじめとしたスタッフは、確かに自分のことを見てくれはするでしょうが、自分が成長することのために全体の枠組みや運営を変えることはしません。つまり、メンバーの誰にとっても、AKBとそのスタッフは自分のためのチームではないのです。

そして、AKBでは複数のグループがつねに門戸を開いているので、ある意味入りやすく(こう言うと怒られそうですが)、アイドルとしてファンの前に立ちやすいことがAKBの特徴です。これを実現したのが、「常設劇場」という仕組みです。「会いに行けるアイドル」というAKB48のキャッチフレーズが示すように、AKBは年間公演総数の最も多いアイドルでしょう。

アイドルに詳しくないオジサンにしてみれば、AKBと聞いて思い浮かべる名前、たとえば多分、渡辺麻友、高橋みなみ、指原莉乃とか、まあいろいろあると思いますが、それらマスメディアが追いかける名前は氷山の一角にすぎません。その下で、数百のメンバーたちがファンの支持を得てその高みに駆け上るべく、常設劇場やそのほかの舞台で、そして稽古場で闘っているのです。

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