あの高級ホテルを売却、ヒルトン次の一手 約20億ドルで買うのは中国の保険会社

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運営経費はヒルトンの負担だが、建物の修繕費などのメンテナンスは安邦保険集団の負担となる。「(老朽化も考えて)今後の資本投下リスクを考えれば、不動産としては売った方が良い。ただしフラッグシップホテルなので運営権は譲りたくない。だからMC方式となった」と、ジョーンズラングラサール(JLL)の沢柳知彦マネージングディレクターは分析する。

一方、安邦保険が不動産を手に入れたメリットも大きい。専門家によれば、ホテルへ投資を行う場合、ニューヨークは投資先として確実で損をしない場所なのだという。「ロンドンやパリも同様だが、新規供給が少なく、需要が大きい都市。ドル相場が堅調で、今後のドル高見通しからもリターンが得られる期待 がある」(JLLの沢柳氏)。老舗ブランドはキャッシュを手にするヒルトンと、ニューヨークの不動産を手中に収めた安邦保険ともに、”旨み”があるというわけだ。

ヒルトンは2007年に米投資会社ブラックストーン・グループ傘下で非上場化し、13年に再上場。資本の効率的な活用をするよう、常に投資家からのプレッシャーにさらされている。13年12月期の収益は、連結売上高が約97億ドル、営業利益率は約11%。同じホテル業界で、「ウェスティン」や「シェラトン」を擁するスターウッドホテル&リゾートの営業利益率の約15%(13年12月期の連結売上高は約61億ドル)に比べると、若干見劣りする。旗艦ホテルといえども不動産部分は売却し、経営を身軽にしたという見方もできる。

国際的ホテルチェーンのビジネスモデル

世界的なホテルグループは海外へ進出する際も、所有と運営を分離するのが一般的で、日本でも同様だ。例えば、マリオット・インターナショナルが運営する六本木の「ザ・リッツ・カールトン東京」は、東京ミッドタウンの所有者である三井不動産と賃貸借契約を結びテナント入居している。新宿の「パークハイアット東京」はウォルドーフと同じMC方式。京都の「ウェスティン都ホテル京都」の場合はフランチャイズ(FC)契約で、従業員の人事権や運営権は近鉄系の都ホテル&リゾーツが持ち、ブランドロイヤルティをスターウッドに支払っている。

リートに売却済みの星野リゾートの「星のや 軽井沢」(撮影:今井康一)

日本では帝国ホテルを筆頭に所有と運営が一体のケースが多いが、分離形態をとる例も増えてきた。日本企業ではいち早く所有と運営の分離を明確化しているのが海外展開も進める星野リゾートだ。先代からの老舗ホテルを再開発した高級旅館「星のや 軽井沢」を、同社傘下のリート(不動産投資信託)に売却済み。「所有と運営を分離したおかげで、われわれは投資を集中することができている」(星野佳路代表)と言う。

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