あの高級ホテルを売却、ヒルトン次の一手 約20億ドルで買うのは中国の保険会社
ラグジュアリーホテルの売却額は2000億円――。今月、米国で大型のホテル買収が発表された。その案件は、世界最大のホテルチェーンであるヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス(ヒルトン)が保有する、ラグジュアリー・ブランドの旗艦ホテル「ウォルドーフ・アストリア・ニューヨーク」(ウォルドーフ)だ。
売却額は約20億ドル。取得先は中国の保険会社、安邦保険集団だ。同社は保険から資産管理までさまざまな業務を行う総合保険グループで、中国内に3000以上の店舗を持ち、総資産は7000億元を超す。商業不動産の仲介会社CBREによれば、今回の買収は、米国おける単独のホテル買収案件としては過去最大。「過去20年間、生命保険会社はホテルに積極的に投資を行っていなかった」(CBREホテルズのエグゼクティブ・マネージングディレクター、アーサー・ブーサー氏)と言われるだけに、不動産業界ではインパクトが大きい。
ヒルトンの2大高級ブランド
ウォルドーフは1893年に開業した老舗ラグジュアリーホテルで、日本で言えば帝国ホテル(1890年開業)のようなもの。ヒルトンの創業者コンラッド・ヒルトン氏が1949年に運営権を取得した。ウォルドーフに加えて、ヒルトンには創業者の名前を冠した「コンラッド」というもう一つのラグジュアリー・ブランドを持つ。東京・汐留にある「コンラッド東京」に比べると、日本人にとってウォルドーフの知名度は低いかもしれない。だが、ニューヨークでは米国内外の要人が定宿する場所として有名だ。かつては、マリリン・モンローがここを“住居”にしていた。
もっとも、ホテル業界ではこの買収を比較的冷静に受け止めている。今回、中国資本の買収でブランドが消えるわけではないからだ。安邦保険集団とヒルトンはマネジメントコントラクト(MC、管理運営委託契約)を結び、今後100年間はウォルドーフとしてヒルトンがホテルを運営する。契約形態にもよるが、一般的なMCの場合、ホテルの損益はいったんオーナー(不動産の所有者)側に帰属し、そこからマネジメントフィー(手数料)がホテル運営会社に支払われる。
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