日本人の大半が知らない欧米流リーダー育成の肝 多読でディベートを積み重ね問題解決力を磨く

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ユニオンの特徴は、将来のロールモデルを数多く提示してくれることです。学生は、目指すべき分野の第一人者と直接交流することで、自分のゴールを知ることができます。

ユニオンでは政治やアカデミックのリーダーだけでなく、ビジネス界のリーダーも招聘します。ラグジュアリーの企業グループLVMH総帥のアルノーや、コカ・コーラCEOのクインシー、グーグルの元CEOシュミットも議場で学生と質疑応答をしています。

ユニオンは学生の自治組織で資金に余裕はありません。世界中のリーダーたちは連絡をもらうと、無報酬でも喜んで駆け付けるのです。

ここは、自由の議論の場なので、どのような質問もできます。時にはゲストに都合の悪い、辛辣な質問もぶつけます。それでも彼らは、未来を担うリーダーのために社会貢献の責任を果たしに来るのです。英語で「責任ある」はresponsibleと言います。これは質問にレスポンスする、つまり答える義務があるのです。

自分の出番を、ディベート訓練をして待っている

将来を担う若者のために、現役のリーダーたちが、自分の行為に対して責任を持ち答えてくれます。

『オックスフォード 世界最強のリーダーシップ教室』(中央経済社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ディベートの中で学生たちは、目の前の偉人と自分との距離を体感し、何が足りないのか、どのような努力を続ければよいのか実感します。

また先人の成功や失敗体験から、これから対処すべき困難も予測できます。いわゆる「ロールモデル理論」です。

学生たちは先人からの学びを得て、大学で身に付けた問題解決能力を今後どのように伸ばせばよいのか、未来の地図を描いて行きます。

イギリスのリーダーをめざす学生たちは、多読、論文執筆、負荷の大きいディベート訓練を続け、世の中のリーダーになるべき時に備えているのです。

前回:読書しまくる人とまるで読まない人に生じる大差(2月16日配信)

中谷 安男 法政大学経済学部教授、国際ビジネスコミュニケーション学会理事

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なかたに やすお / Yasuo Nakatani

慶應義塾大学経済学部卒業。米国ジョージタウン大学大学院英語教授法資格。豪州マッコーリー大学大学院修士号取得。英国バーミンガム大学大学院博士号取得。オックスフォード大学客員研究員。Journal of Business Communication及びApplied Linguistics主要ジャーナル査読委員、University College of London、EPPI‐Centre Systematic Review社会科学分野担当、豪州University of Queensland、ニュージーランドMassey University博士課程外部審査委員。

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