タピオカミルクティーの仕掛けが何とも奥深い訳 オードリー・タンが考える台湾式「集合知」の活用
世界のどこでも、タピオカミルクティーの話をしてオープン・イノベーションを説明すれば、すぐに理解してもらえます。タピオカミルクティーには複数の起源とたくさんの創作理論が絡んでいるため、誰も特許や商標権を主張できないという特徴があるからです。
タピオカ粉でできた黒や白の粒はすべてタピオカとみなされます。南アフリカのルイボスティーだろうが緑茶だろうが、どんなお茶でもベースとして使うことができますし、それに豆乳やオーツミルクを組み合わせても構いません。ですから「タピオカ・ミルク・お茶」は、現地の事情に合わせて好きなように入れ替えることができるのです。
販売するのは特定の製品でもサービスでもなく「食材の組み合わせ」という概念ですから、何をどう組み合わせても誰かに訴えられることはありません。例えばタピオカをピザの上に散らしたとしましょう。誰かに訴えられることなどなく、ただそっぽを向かれて終わりです。まさにメイド・イン・ザ・ワールドなのです。
どこでも誰でもこの「タピオカミルクティー」の概念を使って、何かをミックスして自分の好きなことを表現できます。これこそが「集合知」です。はるか遠いエチオピアでもタピオカミルクティーは知られていますし、飲んだことがある人もいます。私たち1人ひとりが「集合知」というジグソーパズルの1ピースなのです。
集合知にじっくりと耳を傾けて回答するのが「寛容性」
どうすれば人々に負担をかけずに、勇気を出して社会参加してもらうことができるでしょうか。私は寛容性(inclusive populism, 包摂的ポピュリズム)をベースにしてやり方を定義しています。例えば公共政策インターネット参加型プラットフォーム Joinはまさに集合知を利用したシステムです。このシステムは匿名参加できますし、選挙権や市民権がなくても、スマートフォンの番号さえあれば、誰でもJoinで創造的なアイデアを提案できるのです。5000人以上の支持を集めれば、どんな提案でも政府の関連部門が検討して、書面で回答します。
Joinにおいては、まだ選挙権もない15歳だけれど家族のために何かしたいとか、弱者を救済したいといった目的を持った提案者もいるかもしれません。しかし私たちがそうした事情を知るのはいつもすべてが終わってからです。私たちは提案そのものを見て議論し、相手が何歳だろうと立法委員と同等とみなしています。なぜならその人の主張は5000人の支持を取り付けているからです。
市民の定義を「スマートフォンの番号がある人」まで広げ、それ以外は年齢も台湾国籍すらも求めず、5000人の支持さえ得られれば、集合知にじっくりと耳を傾け、しっかりと回答する。私にとっての寛容性とは、このような概念を指すのです。
前回:台湾の超天才が「視点を偏らせない」思考を貫く訳(2月4日配信)
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