台湾の超天才が「視点を偏らせない」思考を貫く訳 問題解決における最初のプロセスは「傾聴」である
「ブロードバンド接続は人権である」と位置付ける台湾政府。なぜなら回線がつながらない場所があったら、そこは民主社会から排除されることになるからだ。そのため、4000メートル級の玉山頂上付近でも10MB/秒の速度でライブ放送ができるようにネット環境が整備されている。
この「ブロードバンド接続は人権」という概念を打ち出し、コロナ禍においても公共の利益を実現してきたデジタル担当政務委員(閣僚)のオードリー・タン(唐鳳)氏は、いかにして人々の意見を反映しているのだろう。「台湾を代表するプログラマー」であり、IQ180以上の「天才」と称される人物。問題解決における最初のプロセスは「傾聴」だと唱える彼女の、対話への向き合い方を探る。
『天才IT大臣オードリー・タンが初めて明かす 問題解決の4ステップと15キーワード』から一部抜粋・再構成してお届けします。
多重視点というエンパシー
私は常に「すべての人の側に立つ(take all the side)」ことを提起しています。ですが、取りこぼされた立場があることに気づいた場合は、その人の視点を読み取って、私のポジションをその立場に移動させてしばらく生活してみなければ、私が真の意味でその人の視点を手に入れることはできないだろうと感じています。
そのため、まずは、「多重視点」で傾聴する必要があるのです。ここで私が「多様な視点」という言葉を使わない理由を説明しましょう。「多様な視点」という言葉はつまり、その部屋の中にさまざまな視点が存在する状態を指しています。この場合、それらの視点はその部屋にいる数の人々がそれぞれ持っている視点というイメージでしょう。
一方、私の言う「多文化主義(transculturalism)」や「多重視点」とは、私という主体(私自身)に発生するものです。要するに私は1つの空間の設計者として、それぞれの人の立場を十分に代弁できる多重視点という能力を頭の中に備えていなければならないのです。
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