タピオカミルクティーの仕掛けが何とも奥深い訳 オードリー・タンが考える台湾式「集合知」の活用

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これに対し、集合知が花開くきっかけを作るのがイノベーションです。例えば新型コロナウイルス感染症が広まり始めたころのマスク不足の時期に、台湾では電鍋(台湾の電気炊飯器)がマスクの消毒に使われるようになりました。本来の用途からは外れていますが、電鍋をマスク消毒に活用する――これが集合知による「イノベーション」です。

最も重要なのは、すべての人が自分もジグソーパズルの1ピースなのだと思えることですが、それには時間がかかります。当然ながら、私が高いところから一声かければ、一瞬でみんなが洗脳されるということではありません。これはネットユーザーが作った噂にすぎず、私が本当に脳波で人をコントロールできるわけではないんですよ。

現代の起業はメイド・イン・ザ・ワールド

台湾は小さいという人もいますが、私は台湾の強みは社会部門の団結力と集合知にあると思っています。例えば起業ですが、環境問題や経済問題、あるいは社会問題の解決を目的として起業する場合、台湾ではスタートアップ企業が実情を確認しながら企業戦略を臨機応変に方向転換しています。

この場合、ほとんどコストをかけずに新しい方法を試行錯誤し続けられることが非常に重要だと私は考えています。もちろん時間というコストはかかります。しかしそのような文化がなかったら1回の起業でその人は破産してしまい、イノベーションも起こらないでしょう。

台湾で起業したらずっと台湾に居続けるべきだとか、台湾で上場すべきだとは思いませんし、台湾を主な市場にしなければならないとも、台湾のユニコーン企業を目指すべきだとも思いません。そんな視野の狭い考え方を私は持っていません。台湾でよいアイデアを思いついた人が新天地で大いに輝くのも、とてもすばらしいことだと思います。

あるいは、どこか別の場所で何かひらめいたけれども、そのアイデアを生かせるのは台湾しかないとわかり、会社ごと台湾にごっそり連れ戻したとしたら、人材を循環させることになるのでやはり非常にすばらしいことです。現代の起業はメイド・イン・ザ・ワールド、全世界が一緒に行う創作活動なのです。

パブリックドメイン(著作権により保護されていた著作物や発明が、著作権の保護期間を経過して社会の公共財産になり、誰でも自由に利用できるようになったもの)における集団創作を説明する際は、タピオカミルクティーを例に挙げると非常に分かりやすいでしょう。

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