「個人の力で稼ぐ」ことにこだわる30歳男性の迷走 ホワイト企業に転職も「焦り募る日々」の理由

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「もともと、時間的に自由になりたいという気持ちがありました。でも、会社員でいると、どうしてもその制約がある。自分は会社員ではいられないタイプではないけど、それ以上に、組織に属さず、個人の力で生きていくことに憧れるようになっていったんです」

マルチまがい団体にハマりかけた理由

そんな古川さんは、自分を変えるために行動を開始……したのだが、これが数年に及ぶ迷走の始まりだった。起業家志望が集まるセミナーに足繁く参加することになったのだが、実はこの団体、“マルチまがいの事業家集団”だったのだ。

「入ったのは、飲み会で知り合った人から久しぶりに『最近どう?』と連絡がきたのがきっかけです。ここは、先輩メンバーと師匠・弟子の関係となり、師匠から『起業のための自己投資』との名目で、月に15万円程度の商品を購入させられるような団体。幸い、自分はのめり込む前に目を覚ますことができたので大きな被害はなかったですが、当時は実家を離れて都内で1人暮らしを始めたばかりで、今思えば格好の獲物だったなと思います」

もっとも、皮肉なことに彼らとの出会いが、古川さんのQLCを加速させることになったようだ。

「彼らに感化されて、『組織に属さず、時間やお金に縛られない生き方したい』との思いがさらに強くなり、会社を辞めることにしたんです。

冷静に考えると“事業家”とは名ばかりで、彼らもべつに何も行動していなかったんですが、やってることはさておき、言ってることは意外とまともで。『組織に頼らず、自分の力で生きていけるようにしよう』とか、『労働収入だけじゃなく、権利収入も得よう』とか。

ぼんやり生きていた当時の私には、彼らの“夢や目標に生きている感”はとても眩しく見えたんです。もともと、転職はいつかしたいと考えていたので、後悔もありませんでしたね」

そうして古川さんは、新卒で入社した会社を辞めることになった。

人間関係が良好で、仕事そのものも楽しくやれている会社を辞めることは、保守的な価値観の人にはややもったいなく感じられるかもしれない。しかし、自分らしい生き方を模索していた彼には、未練はなかったようだ。

その後、古川さんは2度の転職(うち1社は短期間で退社)ののち、現在も勤務中の会社に入社した。IT系企業で、職種的にも今までと同じ顧客対応系だが、AIにすぐ代替されるような業務ではない。「幸い、今の会社は副業もしやすく、フルリモートワークで居心地もよいです」と、ホワイト企業のようでもある。

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