若者がリムジンにはまる、「バブルな事情」 ある複数の条件がそろえば、若者は消費する?

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第3の要因としては、SNSに投稿するネタとしてのニーズである。ネタにならないことには動かないというのは、今の若者の大きな行動原則である。若者にとっては、特にリア充(=実生活が充実している)アピールが仲間内できわめて重要で、その観点からいくと、リムジンやロンドンバスパーティは格好の自慢のネタになる。

景気回復が続く今後、もともとぜいたくをしたい欲求を持つ若者による「プチぜいたく消費」は、ますます増えていくのではないかと予想する。

原田の総評:複数の条件がそろえば、若者は消費する

リムジンパーティやロンドンバスパーティを開催するさとり世代の若者が増えている、という現場研究員のレポートはいかがでしたでしょうか。

今の大学生くらいの親世代は、かつて「バブル世代」や「新人類」と呼ばれた世代が多く、もちろん、世代全員ではないものの、上の世代に比べると、若いうちから消費を謳歌してきた人が多い世代であることは間違いありません。

今回のレポートにあったように、こうした親世代からの過去の武勇伝の語り伝えなどで、さとり世代は内心ではいくばくかのあこがれを持っていて、それがこのリムジンパーティやロンドンバスパーティに表出している面もあるのかもしれません。

特にバブルから20年以上経ち、過去のエピソードが報道や親からの口コミなどで、より増幅されて伝わっている可能性があります。特にさとり世代は親との関係が良好になっているので、よりダイレクトにそれが伝承されるようになってきているのかもしれません。

もちろん、親世代やバブル時代へのあこがれだけが理由なのではなく、バイトの時給が上がるなど、さとり世代自身が、多少、景気の上昇を感じてきたこともあるでしょう。また、彼らが日常的にあまり消費をしなくなったがゆえに、逆に非日常的なシーンには消費する余力がある、といった可能性も考えられます。

また、現場研究員の分析どおり、ソーシャルメディアで多くの友達とつながっている「さとり世代」は、モノを所有すること以上に友達と過ごす時間を重視するようになっているので、友達と一緒に体験できることなら、仮にぜいたく消費であっても行う、などの傾向が出てきているのだと思います。

さとり世代がかつての世代に比べると消費、特にぜいたく消費をしない傾向にあることは間違いありませんが、「友達と一緒に」「SNSにアップしやすい」などの複数の条件が整えば、彼らを消費に動かすことができるという、面白い一例なのではないでしょうか。 

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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